世界が変わっても君と (ページ35)

今日:57 hit、昨日:57 hit、合計:285,549 hit

episode35 ページ35

_

いっちゃんがマネージャーさんと話している間、
コーヒーを入れる準備をしたり皿洗いをする。

その間も翔平はぐっすり眠ってる。
マースも翔平の体の上に乗ってすやすや。
カチャカチャと皿を片づける音が出るけど、
特に起きる様子はないので気にせず洗う。

樹「ごめんおまたせ」

リビングにいっちゃんが戻ってきて
マースが起きていっちゃんの足元にすり寄っていく。

…なにそれ、かわいい。

「コーヒーあとは入れるだけだから少し待ってて」

樹「うん、ありがと」

マグカップにホットコーヒーを注ぐ。

リビングにコーヒーのいい香りが広がる。
自分の分も注ごうと食器棚から勝手に拝借。

＂ピコン＂とリビングの方に置いてあった私のケータイが鳴る。きっと急ぎじゃないだろうから後で見よう。

自分の分には砂糖とフレッシュを入れて甘くする。
スプーンでぐるぐる溶かしながらリビングに向かうといっちゃんが俯いてた。
顔をあげると先程までとは違って暗い顔。

「はい、コーヒー」

樹「ん、ありがと」

さっきのマネージャーさんとの電話のせい？
それとも知らない間になんかやらかしたかな。

甘いコーヒーを啜ってローテーブルに置けば、
ラグの上であぐらをかいてるいっちゃんと向き合って座る。

「あのさ…さっきの話なんだけど、」

樹「うん」

「わたしが東京に行く前にした約束、覚えてる？」

覚えてないって言われたらどうしよう。
胸の音が聞こえてしまいそうなほどドキドキしてる。

樹「覚えてる。
けどその約束ってさもう時効だよな」

「え…？」

樹「元々そんな昔の約束をいまだに信じてる方がバカだわ」

なに、それ。わかんない。
無効…？いまだに信じてる方がバカ…？

なんでそんなこと、言うの。

「 ……っ、かえる、っ」

カバンを持って急いでいっちゃんの家を出た。
外は暗くて、綺麗な月が私を照らしていた。

_