世界が変わっても君と (ページ30)

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まこっちゃんの家の玄関を出て、壱馬くんに掴まりながら自分の部屋まで送ってもらう。

「あ、ここです」

壱馬「ふはっ、ほんまに同じマンションなんやなぁ」

「そうみたいです」

壱馬「今度お邪魔しよかな」

「な、トップアーティストの方をさすがに部屋に入れられませんよ！」

壱馬「え～？」

いたずらっ子みたいな笑顔で笑う壱馬くんは、メディアで見る壱馬くんとはだいぶ違う。
いつもはクールでかっこよくてっていう感じなのに、今目の前にいる彼はずっと笑顔で雰囲気が柔らかい。

付き合っていた頃と同じ。
いわゆる素と呼ばれるものだと思う。

「送ってくれてありがとうございました」

壱馬「ええよだってカレカノの仲やん」

「元ですけどね」

壱馬くんは顔を少し歪めた。
別れたあの日と同じ苦しそうな顔。

わたしにとっては幸せな思い出だけど、壱馬くんにとっていい思い出ではないよね。

「壱馬くんあの、」

壱馬「俺さ」

「は、い… 」

壱馬「やっぱなんでもない」

「そう、ですか」

壱馬「 …敬語外さへんの？」

「え…？」

壱馬「昔みたいにタメ口で話してよ」

「いや、でもそれは、壱馬くん年上だし… 」

壱馬「俺またAと仲良くなりたいし。な？」

わたしが昔みたいにタメ口で話してもいいのかな。
自分からこんな素敵な人をふっておいて。

今更仲良くなんて…していいのかな。

壱馬「敬語使ったらデコピンするから。
じゃあまた明日おやすみ」

「はい、あ…また明日。おやすみ」

私に軽くデコピンをして背を向けて帰っていった。
なんだろう彼といると少しだけドキドキして落ち着く、のかもしれない。

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