世界が変わっても君と (ページ20)

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少し昔のことを思い出そう
わたしと壱馬くんが付き合っていた頃のことを。

壱馬くんと出会ったのは2014年。
わたしがまだ高校生で壱馬くんは武者修行時代。
道に迷っていた彼に声をかけたのがきっかけで、
お礼をしたいと言われてそこからカフェへ。
めちゃめちゃに意気投合した私たちはすぐに連絡先を交換した。

何回か遊ぶうちに壱馬くんからアプローチされるようになって
さすがのわたしでも気づいた。
それでもわたしはいっちゃんとの約束があるからと
何度もそれとなく断ってきたのだけど…

ついに彼は手を打ってきた
代わりでいいから付き合って欲しい、と。
その間にその約束の人が現れたら諦めるとまで言われて、首を縦に振ってしまったバカなわたし。
でもそれくらい壱馬くんの目は真剣で、どこかでわたしは壱馬くんに少し惹かれていたのかもしれない。

壱馬くんとの恋人生活は幸せで、会えない時間も寂しくないようにこまめに連絡してくれた。
このままいっちゃんを待つより、壱馬くんとの未来を共にする方が幸せなんじゃないかと思ってしまうくらいだった。

付き合って三年経った2017年。
高校時代の友達に言われたひとことがわたしを変えた。
＂これから先、いっちゃんが現れてもアンタは彼氏だけを好きでいられる自信ある？＂
普通3年も付き合ってるならすぐにうん、と答えられるはずなのにわたしの中にはいっちゃんとの約束が強く残っていて。
わかんない、とか細い声で言ったと思う。
そうすると友達ははっきりと言ったの。
＂いっちゃんとの約束を1%でも信じてるなら、彼氏とは別れた方がいい。傷つけることになる＂と。

壱馬くんの前でいっちゃん、と言ったことは無い。
昔の幼なじみという言い方でずっと壱馬くんに話してきた。その時の壱馬くんどんな顔してた…？
ずっと綺麗な顔を歪めてた。
無意識にわたしは壱馬くんを傷つけてた。
そこでやっと決心したの、彼と別れようって。

壱馬くんに別れよう、と言えば
彼は引き止めるでもなく
＂今までありがとう幸せだった＂と優しく微笑んだんだ。

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