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Angel 05 ページ7

あの後、何とか事情を説明して理解してもらえたので良かった。享年22とか悲しすぎるので。


現在何をしているのかというと、お腹が空いたと言った彼の分と私の分、二人分の朝食を作っているところで。一人分作るのも、二人分作るのも大して変わらないので、快く承諾したけれども。


オムレツ、ソーセージ、サラダ、バターロールパンというのが今日のメニューなんだけど、見事にサラダだけ残していた。



「野菜も食べなきゃダメですよ」

「……」

「ドレッシングかけますから、ね?」


無言で皿の上のサラダを見つめていた彼は、不意に口を開いて。



「――――そんじゃあ、お前が俺に食わせろ」

フォークを差し出し、挑発的に微笑んだのだった。






そのまま、3秒間程沈黙が続き、先に立ち上がったのは私だった。向かい合わせに座っていたのを移動して、彼の隣に座る。


「フォーク、貸してくださいね」

「――は?いや、え…」

「?」

食べさせてほしいと言ったのは彼だ。なのになぜ、そう言った本人が戸惑っているのか分からない。分からないから、気にせずそのままフォークを取って皿へと持って行く。



――マイキー――


ただ、どんな反応をするのかが気になっただけだった。


勘違いした自分にあわや殺されそうにまでなったのに、平然とその男に朝ご飯を作ってくれるような、どこか抜けている彼女が見せる反応が。


てっきり、怒るか恥じらうかするものだと思っていたけれど、彼女の行動はまたしても想定外で。




「はい、口開けてください」

どこか作り物めいた、繊細で儚げな美貌。美女は見慣れているはずなのに、彼女の顔が近くにあるだけで落ち着かない気持ちになる。


蜂蜜色の大きな瞳で見つめられて、心臓が変な音を立てる。

言われるがまま口を開ければ、そっと口に運ばれる野菜。美味しい。美味しいけれどそれどころじゃなさ過ぎて、ただ咀嚼することしか出来ない。


まるで雛にご飯をとってくる親鳥のような、優しさに満ちた手付きと表情。

皿が空になった後、ほっそりした手で頭をそっと撫でられた。


「……」

理由は分からないけれど、心地よいのでされるがまま。



「お腹も満たされたみたいですし、そろそろ隣に帰りましょうか」

「――――嫌だ」


彼女の言葉に、反射的にそう答えてしまった自分がいた。

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@じゅら - パクりですか? 似てる作品を知ってるのですが… (11月26日 22時) (レス) @page47 id: d21974408e (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃(プロフ) - はじめまして瑠璃と申します。ハッピーエンドかと思いきやまさかの展開でびっくりでした。続編希望します。 (9月5日 16時) (レス) @page45 id: f3335c8e16 (このIDを非表示/違反報告)
ひよこ - めっちゃ最高です (2023年1月11日 22時) (レス) id: 395eb4f5e7 (このIDを非表示/違反報告)
ひよこ - これってもしかしてお隣の天使様に駄目人間にされていた件っていうのを参考にしてますか? (2023年1月11日 22時) (レス) id: 395eb4f5e7 (このIDを非表示/違反報告)
ちゃてぇ(プロフ) - 初コメ失礼します。 梵天のメンバーたちが夢主ちゃんに依存?しちゃう感じででもほんわかな感じで三ツ谷君とこのままハッピーエンドで終わるのかなとおもったら最後の最後でバッドエンドで裏切られました。終わり方も切なくていいなと思いました。続編待ってます (2022年10月30日 22時) (レス) @page47 id: ae31029510 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:雨降り星 | 作成日時:2021年11月3日 20時

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