隣の天使 【梵天】

Angel　27 ページ29

――A――

プールなんて何年ぶりだろう。すごく久しぶりで、だからこそものすごく楽しい。


「よォしA！！春ちゃんと競争な、向こうまで早く着いた方が勝ちっつうことで、」

「やりますやります、やりたいです！」

「負けた方は勝った方の言う事1つ、何でも聞くってことにしねェ？」


三途さんがとっても悪そうな笑顔になる。これは負けてられん。逆立ちで歩けとか言われたらできないし。



ココさんの合図でスタートして、お互いクロールで競争して。


―――結果は、私の勝ち。…だったけど、割とギリギリで危なかった。三途さん、物凄く悔しそうだった。勝った人特権のお願いは、今は保留ということに。


「んーじゃAちゃん、次は俺らと鬼ごっこな？」

「オレらが鬼な」

2対1はちょっときつい。しかも蘭さんと竜胆さん、コンビネーションがもうすごい。神がかってる。


「待て待てー、食っちまうぞ♡」

「……」

どこまでものんきな声だったけど、追いかけて来る蘭さんは異常に速い。本気モードの私は無言でひたすら泳ぐけど、


「わぶ、」

「はい、捕まえた」

前で待ち伏せしてた竜胆さんに、真正面から捕まって。どこにも逃がさない、という風にきつく抱きしめられて、この勝負は私の負け。それにしても、みんな凄く引き締まった細くて綺麗な体をしてる。さっき竜胆さんに抱きしめられたときも、筋肉を顕著に感じた。

素肌同士が触れ合うのは、ほんの少し気恥ずかしい。


ココさんは皆(主に私)の写真を撮りまくってたし、鶴蝶さんは無心で泳いでいて。私もしばらく一緒に泳いだけど、さっきから佐野さんの姿が見当たらない。


「どこ行って――……っ！？」

突如として水の下から体を引っ張られて、そのまま水中に引きずり込まれる。


水の下で、悪戯っ子のように笑っていたのは佐野さん本人だった。
そのまま水中でじゃれ合うように、お互いの体をくすぐりあったりなどの攻防戦が行われる。


あとからハッとして、びっくりするぐらいくっつきすぎてたことに気付いて離れようとしたけど、それは許してくれず。




――――夢のように楽しい一日だった。家でお留守番してる睦月が可哀想。
こうやって友人とプールに行ったりすることに、ずっと憧れてきた。


へとへとになったけど、その分確かな満足感が得られた。今日のことは、これからも決して忘れないと思う。

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