検索窓
今日:38 hit、昨日:46 hit、合計:786,847 hit

Angel 16 ページ18

「お手洗い、借りますね」

「おう、場所分かるか?」

「はい、ありがとうございます」


ココさんや鶴蝶さんは相変わらず優しいけれど、どうにもリビングにいるのが居心地悪くて、逃げるようにその場を後にする。


視線が追いかけてくるのが分かったけど、気付かないふりをして。




「はぁ、喉乾いちゃった」

手を洗っている時にいきなりそんな声が聞こえて、弾かれたように顔を上げた。
そこにはさっきリビングにいた二人の女の人とは違う、この家に入って一番最初に蘭さんといるところを見かけた、あの美人のお姉さん。



「運動した後って、喉乾くのよね〜」

誰かに聞かせるような声でコップに入れた水道水を軽く口に含み、流し込んだ後、




「ねぇ、あんた誰?」

「えっと、あの、隣に住んでます……」

刺々しい言葉に、小さくそう答えることしかできなくて。



「え、じゃあ何でこの部屋に上がってるの?見たところ、恋人ってわけでもないのに、」

「朝ご飯と、お昼ご飯を作ったりするのが、私の…役目?というか」


おずおずと返せば、「ああ、あんたが例の、」と納得したように、唇を吊り上げて嗤う。



「例の?」

「蘭、言ってたよ?―――ウザイ女がいるって」

「っ!」

……その口から放たれた言葉に、息が詰まった。

固まる私を他所に、彼女はスラスラと言葉を紡いでいく。



「頼んでもないのに、勝手に家上がってご飯作ったりなんかして。彼女面されるの気持ち悪いし、どっかいかねぇかなぁって。……蘭、そう言ってたよ?」




時間が止まってしまったかのような、そんな錯覚に陥る。




――――そっか。わたし、嫌われていたのか。蘭さんに、ううん、多分、竜胆さんや三途さんにだってそう思われているはず。今日の態度が言葉よりもはっきりと明白に表していたじゃないか。


「蘭たちの隣に住んでるからって、ちょっと調子に乗りすぎなんじゃない?」

「――」

コップに残っていた水を、パシャリ、と掛けられる。
ここまで誰かに悪意を向けられたことがない私は、何もできずただ突っ立っていただけで。


横髪からポタポタと水を滴らせる私を横目に満足したのか、彼女はリビングの方へ向かって行って。



「きゃ〜りんちゃん久しぶり〜!!」

なんて声が聞こえてきたけど、暫く私はずっとその場に立ち尽くしていた。

Angel 17→←Angel 15



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (1197 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
3074人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

@じゅら - パクりですか? 似てる作品を知ってるのですが… (11月26日 22時) (レス) @page47 id: d21974408e (このIDを非表示/違反報告)
瑠璃(プロフ) - はじめまして瑠璃と申します。ハッピーエンドかと思いきやまさかの展開でびっくりでした。続編希望します。 (9月5日 16時) (レス) @page45 id: f3335c8e16 (このIDを非表示/違反報告)
ひよこ - めっちゃ最高です (2023年1月11日 22時) (レス) id: 395eb4f5e7 (このIDを非表示/違反報告)
ひよこ - これってもしかしてお隣の天使様に駄目人間にされていた件っていうのを参考にしてますか? (2023年1月11日 22時) (レス) id: 395eb4f5e7 (このIDを非表示/違反報告)
ちゃてぇ(プロフ) - 初コメ失礼します。 梵天のメンバーたちが夢主ちゃんに依存?しちゃう感じででもほんわかな感じで三ツ谷君とこのままハッピーエンドで終わるのかなとおもったら最後の最後でバッドエンドで裏切られました。終わり方も切なくていいなと思いました。続編待ってます (2022年10月30日 22時) (レス) @page47 id: ae31029510 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:雨降り星 | 作成日時:2021年11月3日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。