隣の天使 【梵天】

Angel　14 ページ16

―――まず最初に違和感を感じたのは、お隣さんの玄関まで入らせていただいたとき。





僭越ながら朝食、暇があれば昼食まで私がつくらせてもらっていて、いつも決まった時間にお邪魔させてもらっているのだけれど、「失礼します、」とドアを開けた時、いつもならすぐに

「おせーよA、今日何作ってくれんだ？」と三途さんが駆け寄ってくるか、

「A、待ってた」と佐野さんが飛びついてきたりという事が多いんだけれども、今日に限ってそれが一切なくて。佐野さんに関しては忙しそうで、いつも会えるわけじゃないんだけど。



いや、別に入ってきたら挨拶してほしいとかそんなおこがましいことを言ってるのではなくて、いつもと違ったので、少し変な感じがして。



広い玄関に、大きな靴箱。見慣れた高級そうな革靴の他に、初めて見るような女の人用のカラフルなハイヒールが、脱ぎ散らかされていた。


「よい、しょと」

腰をかがめて、ばらばらになっていたハイヒールを、一つにまとめてすぐ履けるように整えて置いておく。バラバラだったら、履きにくいですしね。整えた後、ゆっくりと上体を戻して、



「あっ…やっ、らん、らん♡」

「――はっ、お前腰振りすぎ、」




「？？」

蘭さんらしき人の声と、知らない女の人の声。二人共押し殺したような声量だけど、お客さんが来てるのだったら、その方の分も作った方がいい？


声が聞こえるのは廊下の突き当りの部屋。うっすらとドアが開いていて、声がそこから漏れている。

挨拶した方がいいのかな？もしかして蘭さんの彼女さんかな？と、そっとドアに近付いて、





「!!!!!」





…見てはいけないものを、見てしまった。中には、裸で絡み合う蘭さんと知らない美人なお姉さん。


そりゃあ保健の授業とかで、そういう行為があるというのは知っていたけど、見るのは初めてで。勿論、私自身もそんなのしたことない。


…そして一番最悪だったのが、中にいた蘭さんと目が合ってしまったことで。バッチリ。


知らなかったことにしましょうそうしましょう。抜き足差し足でその場を離れて、リビングへと向かえば。



パソコンに向かって作業するココさん、椅子に座って読書する鶴蝶さん、そして。
ソファの上でベタベタ引っ付きあう竜胆さんと知らない女の人、机であーんごっこしてる三途さんと知らない女の人がいました。


…今日はなんだか、お客さんが多いみたいで。

Angel　15→←Angel　13

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す