隣の天使 【梵天】

Angel　09 ページ11

一限から講義があるので朝早く家を出る私と、夜遅くから仕事を始めるらしい隣人さん達とは、行動のサイクルが全く違うけれど、私達の交流は深まっていった。



控えめに言っても食生活があまりよろしくなかったので、私がご飯作りましょうかと提案すれば、快く承諾してくれて。


家にお邪魔させていただくのも、最初はすごく緊張していたけれど、今では第二の我が家感が凄い。


「今日も反則並みに可愛いなァお前、春ちゃん殺す気かあ〜？」

「滅相もないです、三途さんも、お綺麗です」

「……」

私の言葉に一瞬固まり、それからものすごい勢いで私の頭を撫で始める彼。理由は分からないけれど、取り敢えずされるがまま身を委ねておく。


三途さんは機嫌の落差が激しくて、ものすごくハイテンションな時もあれば、逆にどうしたんだってくらい陰鬱な時もあるし、なかなかに掴みどころがない。


それでも、可愛がってくれるのはとても有難いと思っているし、頭を撫でられるのも嫌じゃない。




「何か欲しいモンあるか、A」

「いえ、特に！」

「あったらすぐ言えよ、俺が買ってやるから」


ココさんは面倒見が良くて、暇さえあれば何かを買ってくれようとするので、いつも止めるのが一苦労である。すごく申し訳ない。



「………大学、楽しいか？」

「はい、とても。私は薬剤師になりたいんですけど、研究もいっぱいできるし、有意義な時間が過ごせてます」

「それは、良かったな」

鶴蝶さんは割と寡黙だけれど、一緒にいるとほのぼのする。癒し系とはこういうことを言うのでは？


一言でいうと、ご隣人さん達は皆さんとても優しくていい人たちなわけで。
それはもう人見知りな私も、すぐに打ち解けることができるくらいには。



だからといって、男性に対する苦手意識は完璧になくなったわけではない。それはひとえに、


「花倉さんこの後ヒマ？良かったら俺らとメシ食いに行こうよ」

「申し訳ありませんが、この後は用事があって、」

「そう言わずに、ちょっとだけでいいから、ね？」

「花倉さん、ほんっと綺麗だよなあ。俺らびっくりしたもん、君みたいな美人入ってきたから」


……こういう方たちが存在するからと言っても、過言ではないと思う。

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