Episode08 ページ10
□■ side 千冬 ■□
「ねー千冬ー」
「ん?」
「千冬ってば」
「どーした?」
漫画から視線を外さない自分に、Aが甘えるように、背中に抱き着いてくる。
くんくんと匂いを嗅いだり、指でツンツンしたりと、なかなかに可愛らしい行動を繰り返す彼女に、千冬は上の空で答える。
……否、“上の空に聞こえるように”あえて空返事をしているだけであって、本当は今すぐにでもAを抱きしめたい。思う存分可愛がりたい。
千冬の家に遊びに来たAは、肝心の千冬が構ってくれないので、どこかご機嫌斜めにも見える。
こうやって甘えられるのが好きで、わざとそっけない態度をとってしまう。これもまた、小さな意地悪の一つ。
「……」
諦めたのか、やがてAはゆっくりと体を離し、向こうの方へ行ってしまう。彼女の温もりが恋しくて思わず引き留めそうになるのを、何とか堪えた。
「――A?」
物音ひとつ聞こえてこないので、不思議に思って後ろを振り返れば、そこには自分のベッドですやすやと眠りこけるAの姿が。
「マジかよ…」
いくら信頼されているとはいえ、普通こんな躊躇なく男のベッドで眠れるものだろうか。
理性がゴリゴリ削られていくのを感じつつ、そっとそばに腰かけて、Aを観察する。
いつ見ても綺麗だ、と思う。幼い頃から一緒にいて、彼女の顔は見慣れているはずなのに、それでもこんなにも胸が高鳴っている。
人形のように完璧に整った顔立ちは、あまりにも精巧過ぎて、その幻想的な雰囲気も相俟って、彼女の非生物性をより強調しているようだった。
紅い唇から漏れる小さな寝息と、僅かに上下する胸だけが、Aが人形ではなくて人間であることを示してくれる。
そっと手を伸ばして頬に触れると、少しひんやりしていて、それはもう白磁を思わせる滑らかさ。
「……はは、やべ、超かわいい」
夢中になって指を滑らせても、全く起きる気配はない。満足のいくまで頬を撫でた後、最後に指先が到達したのは、瑞々しい苺のように柔らかそうな唇。
その果実を味わおうと、ゆっくりと顔を近付けて、
「……やっぱ、やめた」
寝ている状態で奪っても、自分が完璧に満足できるとは思えない。
「…ったく、次こんなことしたら、マジで襲うからな」
2人きりの部屋で、千冬の小さな声だけが、その場に残っていた。
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雨降り星(プロフ) - れななさん» 凄い嬉しいです!!はい!花子くん大好きです!! (2022年3月2日 21時) (レス) id: c629cc7e2d (このIDを非表示/違反報告)
れなな - 今日初めて読んだんですけど、もっと早く読んでたらなあ、、って思いました(*´ω`*) もしかしてなんですけど、花子くん読んでますか??違ったらごめんなさい。 (2022年2月27日 17時) (レス) id: 4324c59b1c (このIDを非表示/違反報告)
雨降り星(プロフ) - らんさん» 結婚しましょう!?!?いつもありがとうございます、これからもぜひぜひよろしくお願いいたします!💕💕💕 (2021年11月16日 20時) (レス) id: c629cc7e2d (このIDを非表示/違反報告)
雨降り星(プロフ) - チョコプリンさん» それはすごい良かったです!毎度毎度コメント励みになってます、ホントにありがとうございました🥰🥰🥰 (2021年11月16日 20時) (レス) id: c629cc7e2d (このIDを非表示/違反報告)
らん - コメントするのが遅くなってしまいました😭😭完結おめでとうございます!雨降り星様安定で大好きです😍隣の天使も更新楽しみにしてます~!!! (2021年11月16日 20時) (レス) @page47 id: 6288d5ccfe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雨降り星 | 作成日時:2021年10月10日 11時