自分の顔が綺麗すぎて二度見した。

Episode05 ページ7

その少年は、純粋に悪気無く尋ねたっぽかった。
……うーん、辺りを見回しても不審者らしき人物は見当たらないし、多分私のことで間違いないだろな。



いやまあ確かに、全体的に不審者っぽい雰囲気を醸し出してるのは否定できないけど、ふつうそれ本人いる前で言う？



「ウチの友達！仲いいんだ〜」

「……ふーん、」

胸を張ったエマに、大して興味なさげに相槌を打った後、遠慮なくジロジロこちらを見つめる彼。やめてくださいヒッキーは人と目を合わせるのが苦手なんです。とは言っても、向こうから私の目は見えてないと思うけど。



視線から逃れるように横を向いて、雰囲気的に彼がエマのお兄さんなのかな、と考える。その時、



「なあ、その眼鏡偽モンだろ？何で伊達メガネなんかつけてんの？」

「！」


……びっくり。なかなか鋭いな。鋭いけど流石に、「自分の美貌を隠すためです」なんて言えるわけないし、言っても頭パッパラパーな奴としか思われない。



なんて答えればいいのか分からず、っていうかそもそも初対面の人とは喋れず、無言でもぞもぞしていたら、我慢できなくなったのか、直接腕を伸ばし、私の伊達メガネを取ろうとする彼。そんな彼の腕を、


「っ！？」


反射的に、パシィィィンとものすごい勢いで振り払ってしまった。




「……ってぇ、何すんだよ！」

「―――」




……うん、そりゃ怒るよね。でも、君も悪いと思う。私も悪かった。心の中では謝ってるから許してくれ。言葉にできないだけなんだ。ま、そんなの通用しないけど。




私は逃げます。



「あ、ちょっ、オマエ何逃げてんだよ！？」

―――案の定、追いかけてきますよね。だがしかし、暴走族の総長であるという彼と、家にいてばかりで運動全然しない私じゃ、比べ物にならない。故に、あえて人ごみに紛れ込むという原始的な手段しか取れない。



「待てコラ！」

やめてそんなに必死に追いかけないで。血眼になってんじゃん。
後ろを見ながら走っていたせいか、前にいた誰かに思いっきりぶつかってしまった。


「いてっ、え、何？」


……どうしよう、またほかの誰かの怒りを買ってしまうのか、と絶望的な気持ちで前を向き、



「……ぇ、」

思わず、かすれたような声が洩れる。髪の色も背丈も変わっていたけれど、身に纏う雰囲気は変わらない。



「――千冬っ!!」

「！―――Aか？」



久し振りに、幼馴染と再会しました。

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