自分の顔が綺麗すぎて二度見した。

Episode38 ページ40

なんて、そんなクソ意地の悪い人間になるつもりはないけれど、ちょっとくらいお返ししたっていいんじゃないかと思う。


自分の眼鏡とマスクを取り返そうとしつつ、彼の黒マスクを取り返されないように防御しつつ、揉みくちゃになっていたら、



「あのー、仲が良いのは大変素晴らしいのですが、店でいちゃつくのはやめてもらえませんか？他のお客様のご迷惑になりますので…」



店員さんに注意された。
滅茶苦茶恥ずかしかった。顔から火が出るかと思った。そうか、傍から見ればいちゃついてる風に見えたのか？



凄まじく不本意な勘違いだし、実際隣の彼もめちゃ顔真っ赤にして怒ってたけど、取り敢えず店員さんに謝った。



外に出て自転車を手で押しながら歩く。本音を言えばさっさと帰りたいんだけど、籠を押さえつけられてるのでそれは不可能だ。後ろ乗せろと言われ、流石に無理だと断ったらこうなった。…いや、なんで？理不尽すぎん？



沸々と怒りが再燃するけど、もはやその気力すら失われて怒りは強制的に沈静化される。


「名前、なんていうの？」

「――三途、春千夜」

「さっきコンビニで店員さんに怒られたのは、アンタのせいだからね、春千夜」

「あ゛ぁ！？知らねえよ、勝手に名前呼び捨ててんじゃねぇ！！」


ああ、君もそういうの嫌なタイプ？三途っていうとどうしても、あの世っぽいので呼びたくなかったというか。実はかなりそっち系の話苦手だったりするから。



「…分かった、呼ばない」

「呼ぶなとは言ってねぇだろ！！」

「言ったわ！！数秒前に言ったわ、冒頭の記憶改竄されたん！？」

言動すべてにキレられるので、余りに理不尽。



結局何がしたかったのかもよく分からなかったし。私の顔を見てみたかっただけとか言ってたけど。興味本位で顔面国宝を拝もうとするんじゃない。…すいません、調子乗りました。




「じゃ、私こっちだから」

「………」

良かった、自転車の籠解放してくれた。


「あ、そう言えば、」

「…？」

「傷も、ワイルドでカッコイイと思うよ」

言うのが恥ずかしいので、なるべく目を合わせないで言う。春千夜が、驚きで息を吞む声が聞こえたけど、気にしないふりをして、家路に着いた。








--------ｷﾘﾄﾘ-------

宣伝 こちらも良ければ是非↓
隣の天使

Episode39→←Episode37

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す