自分の顔が綺麗すぎて二度見した。

Episode29 ページ31

まああれだけ美形だったら、そりゃモテるでしょうな。髪色やばいけど。
群がっている女子たちも可愛いっちゃ可愛いんだけど、押しが強すぎて逆効果みたいだし、私的にはかなり苦手な人種。


彼女達、獲物をしとめたハイエナみたいにギラついた目をしてるし、ありゃ当分逃げ出せないな。可哀想に。ご愁傷様です。


と、どこか他人事のように、(っていうか実際他人事)ぼんやり眺めてたら、不意に中心の彼と目があった―――ような気がした。


こっちはマスクと伊達メガネしてるし、そう感じたのは気のせいなのかもしれないけど。





『此花、いっつも松野と一緒にいるか、一人でいるじゃん。根暗っぽい』

『俺らが遊んでやるから、早くこっち来いって、』

『…私は、』

『どうせ一人で帰るだけなんだろ？可哀想な奴』


――――不意に思い出されたのは、小学校の頃。私もこんな風に、余り、っていうか全く仲が良くない男子生徒数人に囲まれたことがあった。



根暗っぽい？可哀想な奴？
根暗で結構、あんた達みたいなやつと関わらずに済むなら、そう言われる方が何百倍もマシ。私には、千冬がいればそれでいい。……そんなことを、口には出せず、心の中で毒づいていたっけ。


あの時は即座に千冬が現れて、全員ぶっ飛ばしてくれたけど。



助けを求めるような目だった。今の彼も、あの時の私みたいな気持ちなんだろうか。


「……あー、もう」
―――凄く、イライラする。






□■ side 竜胆 ■□


「……ごめんね、遅くなっちゃって。待たせちゃった？」




引き剝がしても引き剝がしても纏わりついてくる蜘蛛の巣みたいな女共に、鼻がひん曲がるような甘すぎる香水の匂いに、ウンザリしていた。


……だから、突如として目の前に現れた少女の存在に竜胆はおろか、周りにいた彼女達までもが、呼吸を忘れたように息を呑み、歩みを止めた。




――――今まで見たことが無いほど、いい女だと思った。


精緻で繊細なビスクドールのような面貌に、わずかに上気して桜色に染まった白い頬と、翡翠の宝石を嵌め込んだような瞳が、何とも言えず愛くるしい。


真っ白なデコルテが覗く襟ぐり広めのシフォンブラウスに、袖部分は長めのランタン袖。
側面にスリットがあり、レースで隠しつつもほんのり二の腕が露出しているのが妙に色っぽい。

動きやすさを意識したのか、スキニーパンツは彼女の足の細さを強調している。

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