Episode14 ページ16
少し吊り上がり気味の猫目、スッと通った鼻梁、薄い唇。
千冬の端整な顔立ちが、ほんの少し、焦りで歪んでいた。最も、そうなっていても、千冬の顔は綺麗だけれど。
「痛くないか?―――どこも、触られてねぇ?」
ギュッと手首を握られる。さっきの男たちの独りよがりな掴み方とは違う、私に痛みがこないように、ちゃんと加減されていることが分かる握り方だった。
「……うん、大丈夫」
「そっか。――――Aになんもなくて、良かった」
へらり、と緩んだ笑顔を浮かべて。千冬のそんな表情に、心臓が、ばくん、と殊更大きく音を立てた。
握られた手首から、触れ合った素肌から、じんわりと熱が全身を巡っていく。
――――恋は、するものじゃなくて、落ちるもの。
そんな言葉を聞いたことがあったけれど、自分には関係ないと、そう思い込んでいた。
勘違いだった。思い違いをしていた。だって現に私は、今、こんなにも頬が熱い。心臓がうるさい。
……大切な幼馴染だと思っていた。唯一、素の自分をさらけ出せる、心を許すことができる人間だった。それは今も、そしてこれからも変わることは無い。
たった一つ変わったのは、その大切な幼馴染に、千冬に、異性としての恋心が芽生えてしまったことぐらい。
「……あんまり外で、その顔見せたりすんなよ。――――A?」
「へ?―――あ、うん、聞いてます、ちゃんと聞いてました、うん、私がすごく不注意だった」
「ハハ、何焦ってんだよ」
ボーっと千冬の顔を見つめていると、訝しげにそう言われて。良かった、変には思われてないっぽいけど。
「家まで送っていくよ。変な奴に絡まれたら困るだろ?」
「…うん。うん、ありがとう」
するり、と自然に手を繋がれて、思わず体がはねそうになったのを、何とか抑えた。
「ほんっと、この綺麗すぎる顔、どうにかなんねぇかな、」
「……いたい」
ほっぺをむにーっと掴まれ伸ばされて。目で抗議しても、さらりとかわされるだけ。
私の顔を見慣れている千冬は、私の素顔を見ても他の瞳隊に動揺することはない。
(こういう時に限って、役に立たないんだよなー私の美貌)
つくづく恨めしい。本当に可愛いと思ってもらいたい人に対しては、効果を発揮しないだなんて。
……最も、自分からアプローチを仕掛けるつもりはないけれど。
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雨降り星(プロフ) - れななさん» 凄い嬉しいです!!はい!花子くん大好きです!! (2022年3月2日 21時) (レス) id: c629cc7e2d (このIDを非表示/違反報告)
れなな - 今日初めて読んだんですけど、もっと早く読んでたらなあ、、って思いました(*´ω`*) もしかしてなんですけど、花子くん読んでますか??違ったらごめんなさい。 (2022年2月27日 17時) (レス) id: 4324c59b1c (このIDを非表示/違反報告)
雨降り星(プロフ) - らんさん» 結婚しましょう!?!?いつもありがとうございます、これからもぜひぜひよろしくお願いいたします!💕💕💕 (2021年11月16日 20時) (レス) id: c629cc7e2d (このIDを非表示/違反報告)
雨降り星(プロフ) - チョコプリンさん» それはすごい良かったです!毎度毎度コメント励みになってます、ホントにありがとうございました🥰🥰🥰 (2021年11月16日 20時) (レス) id: c629cc7e2d (このIDを非表示/違反報告)
らん - コメントするのが遅くなってしまいました😭😭完結おめでとうございます!雨降り星様安定で大好きです😍隣の天使も更新楽しみにしてます~!!! (2021年11月16日 20時) (レス) @page47 id: 6288d5ccfe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雨降り星 | 作成日時:2021年10月10日 11時