Route 万次郎__01 ページ26
「―――行かないよ、どこにも」
泣き笑いのような顔で帰れと言った万次郎に、私はきっぱりと答える。
「……は?」
啞然とした表情で、万次郎が口を半開きにする。何かを言おうと口を動かした後、その唇から言葉が紡ぎだされて。
「何、言ってるんだよA…何で、」
「私はずっと、万次郎と一緒にいる」
「!―――俺は!俺はいつか絶対にAを、取られたくなくて、きっと…」
「いいよ」
近付いてそっと抱きしめれば、体をこわばらせる万次郎。
「あなたのこと好きだから。―――万次郎にだったら、何されたっていい。…殺されたって、」
きっと私は、どうかしている。殺されてもいいだなんて、そんなのMの極みじゃないか。
…それでもその言葉は、私にとっては紛れもない真実だった。
「Aの、両親は…」
「ちゃんといっぱい考えた。お父さんにも、お母さんにもたくさん心配かけて、きっと死んで詫びたって償いきれないくらい申し訳ないことをするって、わかってるよ」
――――全部全部分かっていて、それでも私は万次郎を選ぶ。…あの時、首を絞められ殺されかけて。あの瞬間に、この人には私がいないとだめなんだと、そう思った。
強く見せかけているだけで、本当は、脆くて繊細で、壊れやすくて。
本当はもっともっと弱い彼を、ずっと傍で支えてあげたいと、そう願ってしまった。
「私はあなたのすべてを受け入れて、愛するよ、万次郎」
どんなに歪でも、これはきっと愛。初めて出会ったときから、こうなることを私達は運命付けられていたのかもしれない。
「―――俺から逃げられる最初で最後の機会を、お前は自分で放棄したんだ」
いつの間にか万次郎の腕が、私の腰に回されていた。そのまま痛いくらいにきつく抱きしめられる。
「もう俺から逃げることも、離れることも許さねぇ。―――んなことしたら、殺す」
一切の躊躇もなく、彼はそう言い切る。誇張でもなく、それは事実なんだろう。そんな素振りを少しでも見せたら、私はきっと即座に殺される。
「……はい」
小さく顎を引けば、満足そうに万次郎は微笑んで。そのまま嚙みつくように、唇を塞がれる。
「ん、んん、」
「―――」
唐突だったのと少し苦しいのとで彼の胸を叩いて抗議するも、ビクともしない。
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ミツキmitsuki(プロフ) - さいっこうに面白かったです!みんなの特徴を捉えてて、本当にすごい… (12月30日 14時) (レス) @page44 id: 75866be232 (このIDを非表示/違反報告)
むーこ - 三ツ谷君かっこよすぎです。。。。。この作品に出会えてめちゃくちゃ幸せです。。。!ありがとうございます!! (12月28日 1時) (レス) @page44 id: 612ac16389 (このIDを非表示/違反報告)
ユキト(プロフ) - 隆が男前すぎてキュンキュンが止まりません!完結おめでとうございます! (7月8日 9時) (レス) @page44 id: 08a263e11b (このIDを非表示/違反報告)
Kさん - ドラケンがいない気がするけど気のせいでございましょうか?あと最っっっっっっ高です! (2022年9月9日 18時) (レス) @page44 id: f72f202f06 (このIDを非表示/違反報告)
shoko0619(プロフ) - この小説大好きすぎます。大好きです。消さないでください。 (2021年12月31日 9時) (レス) id: 9301928d42 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雨降り星 | 作成日時:2021年9月25日 14時