透明な色

☆番外編 ページ14

※唐突ですけどここで番外編入れます。時系列は割と曖昧です。




「Aー」

「ん？…はい、なに？」

「いや、呼びたくなっただけだよ」

「何それ」



三ツ谷がそう言って柔らかく微笑めば、同じように可憐な微笑を返すA。
今日も今日とて仲のいい二人を、少女、桜井ひよりは忌々し気に見つめていた。





――――椎名Aは性別問わず、非常にモテる。
容姿端麗・成績優秀・スポーツ万能と3拍子揃った彼女に、憧れを抱く男子も女子も多い。



……最も、高嶺の花過ぎて近寄りがたいためか、彼女に友達はほとんど存在しないようではある。そしてその数少ない友人の一人が、三ツ谷隆なわけだが。



Aを見つめる三ツ谷の瞳は、蕩けるほど甘く、熱を帯びている。
そんな表情を見るたび、腸が煮えくり返りそうになった。





「椎名さんって、三ツ谷君とばっかり仲が良いよね」

「ねー、男に媚びてる感じでヤだよねー、そんなんだから友達出来ないんじゃない？」



……ただ、一定数以上は彼女に良くない感情を抱く女子も存在することは確かで。




「ねぇねぇ、ちょっと私とお話ししない？」

「……何？、桜井さん」



遠巻きにAに対して敵意の視線を送っていた女子たちに、ひよりはあくまでも明るく話しかける。口の端を、にんまりと吊り上げて。









…うーん、最近身の回りのものがよく無くなる。
無くしもの・忘れ物はかなり多い方だと自覚しているけれど、ここまで頻繫にとなると、何か意図的なものを感じてしまうんだよな。



まあ、軽い嫌がらせ的なものだろうと見当をつける。
小学校の時もあった。極力誰からも負の感情を向けられたくないがために、出来る限り誰とも関わらないで、ひっそりと生きてきたつもりだったけど。




流石に、隆に貰った花と蔦の模様のキーケースとか、おばあちゃんに買ってもらった、私の名前が金色で彫ってある大事なシャーペンとかは、執念で探し出しましたけど。あれらはめちゃ大切。





「数学の教科書がないなー」

1時間目の授業で使うから、机の中に入れていたんだけど。鍵付きのロッカーに入れときゃ良かった。……でもまあいっか。無いなら仕方ない。




「教科書ないのか？見せてやろうか？」

心配そうに隆が、私を覗き込んでいるけれど。

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