それぞれの道

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うーむ。チョコを作ると張り切って豪語したのはいいものの、何を作るのかが決まらない。


取り敢えずで隆に電話したら、『なんでもいいけど甘すぎないやつ』だそう。
まあ、男の子で甘ったるいものが好きな人って、そんないないもんな。……万次郎は別。



ガトーショコラとかはなんとなくありきたりだし、かと言ってクッキーとかマシュマロっていうのもなー。やっぱりバレンタインなんだから、チョコがいい。



何かヒントになりそうなものはないかと製菓店にもやってきたけど、私はお菓子作り好きなので、キットに頼るのもうーん、って感じ。




「…うぐぐ、悩む」

「―――何がそんなに悩ましいんだよ」


顎に手を当てて考え込めば、急に話しかけられて飛び上がった。
後ろを振り向いて、私は自分の顔が嫌悪に歪んでいくのを感じる。



「あ！いつかの破廉恥野郎！！」

「バカ、大きな声でンなこと言うんじゃねぇよ！！」



顔を真っ赤にして私の口を手で塞ぎに来たのは、いつかのあの兄弟の弟の方。はいたにりんどう、とかいう名前のアイツだよアイツ。




「そんで？さっきからAは何に悩んでんだよ」

「何故私の名前をご存知なのでしょうか。きもっ。今すぐ消えてください」

「海で会った時マイキーがオマエの名前呼んでたからだろ！？……確かにあの時は悪かったと思ってるって。――そんな嫌われるとか、思ってなかった」

「そりゃ、好感度最悪突き抜けてますから。今更何を謝ろうと無駄です。無駄無駄無駄」

「お前もお前で相当最悪だよ」




はぁ、まったく今日は災難な日だ。昨日千冬にあって満タンになってた幸せゲージが、一気に下降していく。……やばそうな兄の方に会わなかっただけマシ？？





「バレンタインのチョコ、何作ろうかなーと」

「！……ふーん」


結局話してもうた。こんな奴からでも、アイデア搾り取れるかもだし。



「…どんなの作りてぇの？」

「そこまで甘すぎず、見た目も綺麗で、美味しいやつを」

「そんじゃ、オランジェットにしたら？」

「！――それ、すごくいいかも」



オランジェットか。確かにものすごくいいかも。アレ、私一番好きかもしれない。
何か、この人にそんな素晴らしい案を出されたっていうのがちょっと癪だけども。

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