それぞれ30 ページ30
「ああああ…」
頭を抱えてそのまましゃがみ込む。
――――キスしてしまった。万次郎と。…短期間に、二人もの男の子と。
隆とも、万次郎ともキスした?―――私が?
「ああ有り得ない信じられない考えられない、どうしよう…」
色恋に関して、ふしだらな女になるのだけは嫌だった。嫌だったというのに。
…実際自分は、決して自分からしたわけではないけれど、二人の異性と唇を重ねて。
「…そんな落ち込まれると、傷付くんですケド」
「ヒッ!?」
いつの間にか前に回り込まれていて、顔を覗き込まれてビックリした。
「ごめん、一旦タンマ」
「は?…ちょっ」
――――逃げた。嫌だってコレは逃げる一択しか残されていないでしょ。超走りにくかったけど、猛スピードで全力疾走した。…いや、逃げたんじゃない、戦略的撤退である。断じて、後からじわじわ恥ずかしくなって逃げたとか、そんな恥ずかしい行動ではない。ないったらない。
人混みをかき分けて走って走って、見慣れた顔を見つけたからそのまま飛びついて深呼吸する。
「…うぉ、ってA、俺はお前のことずっと探して…」
「隆隆隆隆隆隆隆隆隆隆隆隆隆隆隆隆」
「―――どした?そんな呼ばなくても、聞こえてっけど」
ちょっと怒ったように眉を上げていた彼だったけど、私の様子が異常であることに気が付いたのか、途端にふにゃっと眉を下げて、心配そうにこちらを見つめる。
そんな隆に心の底から安堵して、もう一度抱きついた。
「隆、私の傍から絶対離れないでね。ずっとずっと一緒にいてよ」
束縛彼女チックな発言になったのは許してほしい。
「おー、言われなくてもそうするつもりだけど。…ってか、勝手にどっか連れてかれたのはAじゃねぇか」
照れくさげに頬を掻いた後、思い出したように不機嫌になるけど、しっかり手を握ってくれるところが優しい。
その後も冷やかされたり、千冬にジト目を向けられたり、万次郎に見つかったりして色々あったけど、何があっても私は隆に引っ付いたままだった。
…隆に対して、酷なことを行っている自覚はある。はっきりと恋愛感情を持っているわけでもないのに引っ付いたり、抱きついたり。
それでも、許されることなら、今のままの関係性でもう少し居たい。
そう願うのは、果たして悪いことなのだろうか。
2795人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ま - え、これって駿台模試の英文ですか!? (2022年5月22日 13時) (レス) @page15 id: 8b077b9bca (このIDを非表示/違反報告)
わたし - まって、私坂本なんだけどw (2022年5月11日 17時) (レス) @page6 id: 4ecae0ff80 (このIDを非表示/違反報告)
雨降り星(プロフ) - シュウさん» そうなんですよ…時間があればいろんな人のエンドつくりたいとか思うんですけど、話数的に厳しかったり…(´・ω・`)楽しみにしてくださってありがとうございます! (2021年9月28日 7時) (レス) id: c629cc7e2d (このIDを非表示/違反報告)
シュウ(プロフ) - 夢花さん» この作品いつも楽しみにしています。三ツ谷も千冬もマイキーも選べない!各々のエンド作って欲しいです(土下座(願望なだけなのでご無理はなさらなず) (2021年9月28日 4時) (レス) id: ad2f2b2a8f (このIDを非表示/違反報告)
夢花(プロフ) - 千冬…………まぁ、可愛いければなんでもいいよね!!!うん!!! (2021年9月24日 18時) (レス) id: 78d9e81099 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:雨降り星 | 作成日時:2021年9月3日 9時