検索窓
今日:6 hit、昨日:22 hit、合計:630,271 hit

それぞれ15 ページ15

______side



初めて出会ったときから、嫌いだった。
色素の薄い、日本人離れした綺麗な容貌と、可憐な佇まい。…それだけでも嫉妬の対象であるのに、好きになった人の好きな人が彼女だったなんて。――許せないと、そう思った。




この前の英語の時間。スピースピーと寝息を立てていた彼女に、英語の先生が目ざとく気が付いて。


「はいそこで吞気に居眠りしているAさん、今から言う日本語を英語に訳してくれる?」

「…ぇ、あ、」

隣に座っていた三ツ谷君に起こされたばかりの彼女は、寝ぼけ眼で、何が起こっているのかもわかっていない様子。



先生も先生で随分底意地の悪いことをするが、内心、ざまぁみろと思った。
クラスの前で失敗して、恥をかけばいい。そう、ほくそ笑んだ。



「それじゃあ行くわよ?―――中央アメリカの高地で生まれ、何千年もの間農民によって育てられたトウモロコシは、豊富に収穫され、成長しやすい食用作物として、世界中で栽培されています。……さあ、どうぞ?」


今読んでいた教科書にものっていない、どこから引いてきたのか分からない日本語の文。到底答えられるはずがないと、誰もがそう思って、



「えー…、Born in the highlands of Central America and bred by farmers for thousands of years, corn is grown worldwide as an abundantly yielding, easy-to-grow food crop――――あってます?」

「…っ、あって、います」


クラス中から感嘆の声が上がって。
綺麗で、それでいて英語が得意で、頭も良くて。どこまでも吞気そうな顔のままでいる彼女を、心から憎悪した。



だから、三ツ谷君の隣という居場所を取られて、僅かに不満そうな顔をするAに、溜飲が下がった。いい気味だと、思ったのに。



「んじゃ、バイバイ!」

ある日を境に、彼女はそんな素振りすら見せなくなって。三ツ谷君以外の友達がいないという彼女は、大抵一人で何かしている。なのに、全くこれっぽっちも寂しそうな気配を見せない。


むしろ一人でいることを好んでいるようにすら見える。一人だけれど、独りではない。


まるで蝶のように綺麗でふわふわと自由に飛び回り、誰もが掴まえることのできない彼女に、誰もが惹かれる。


――――そんな彼女の言動のすべてが癪に障った。

それぞれ16→←それぞれ14



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (680 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
2794人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

- え、これって駿台模試の英文ですか!? (2022年5月22日 13時) (レス) @page15 id: 8b077b9bca (このIDを非表示/違反報告)
わたし - まって、私坂本なんだけどw (2022年5月11日 17時) (レス) @page6 id: 4ecae0ff80 (このIDを非表示/違反報告)
雨降り星(プロフ) - シュウさん» そうなんですよ…時間があればいろんな人のエンドつくりたいとか思うんですけど、話数的に厳しかったり…(´・ω・`)楽しみにしてくださってありがとうございます! (2021年9月28日 7時) (レス) id: c629cc7e2d (このIDを非表示/違反報告)
シュウ(プロフ) - 夢花さん» この作品いつも楽しみにしています。三ツ谷も千冬もマイキーも選べない!各々のエンド作って欲しいです(土下座(願望なだけなのでご無理はなさらなず) (2021年9月28日 4時) (レス) id: ad2f2b2a8f (このIDを非表示/違反報告)
夢花(プロフ) - 千冬…………まぁ、可愛いければなんでもいいよね!!!うん!!! (2021年9月24日 18時) (レス) id: 78d9e81099 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:雨降り星 | 作成日時:2021年9月3日 9時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。