たらたら31 ページ32
「万次郎、いい加減に―――」
「Aってさ、身長俺と大して変わんねぇケドさ、こんな細っこいし、柔らけェし、」
「ちょっとおい、万次郎?おーい?」
万次郎の焦点が私と合ってない。…何だろう、何となく雰囲気がいつもと違う。
「――無理矢理にでも、オレのモンにしときゃ良かった」
「…はい?」
万次郎が何を伝えたいのか全然分からない。薄く微笑んだまま、ただこっちを見つめている。
「今でも、ずっと考えてんだ。…あの時ああしてたらどうなってただろうってさ。今更、どうしようもねェケド」
「――え、なに、何が?」
「いいよな、三ツ谷。簡単にお前に触れて、…俺は話しかけるだけでも緊張すんのにさ、こう見えても」
壊れたように喋り続ける万次郎。まるで聞き手がいることを忘れたかのように、自分本位で。
…うああー!もう!!
「何が言いたいねん。ハッキリしてほしい」
今でも、背骨折れるんじゃね?ってぐらいきつく抱きしめられてる状態だけど、万次郎の頬を両手でパチンッと挟み、無理矢理視線を合わせる。…初めて彼が、こっちを向いた気がした。
「…オレさ、Aのコト、まだ好きなんだ」
「――――ぇ」
…やっぱり、はっきり聞きたくなかったかも。
「な、何言ってんの、冗談はよして。大体、胡桃ちゃんは…」
「胡桃とはもう別れた」
―――え。ちょっとショッキングな内容が暴露され過ぎて情報処理が追い付かない。そんな私に、万次郎はスラスラと説明しだす。
曰く、私を妬かせたいというただつまらない理由のみで胡桃ちゃんと付き合い始めて。しかし私が全く気にする様子もなく、もはや意地になって胡桃ちゃんとの関係を継続して。
「…は?本気で言ってんなら、アンタ最低だよ?クソくだらないことに付き合わされる側の身になって考えたことあんの?」
「分かってる、だから土下座して謝ったんだ、オレ。許してもらえるとは思ってなかったし、実際ぶん殴られたし。それ以上のことされても仕方ないって、ちゃんと分かってて、それでも」
そこでいったん言葉を区切り、真正面から私を見据える。突き刺すほど真っ直ぐな漆黒の眼に、喉がコクリと鳴った。
「Aが好きなんだ。オレは…オレは、Aじゃなきゃ駄目なんだよ。あの日の夜からずっと、みっともなく泣いてたオレのことをオマエが慰めてくれたあの時から、あの瞬間からずっと、Aのことしか見えてねぇんだよ」
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キャラメルシュガー(プロフ) - まって..wwこのお話面白すぎて夜中なのに爆笑してしまったwww作者さん神‼️ (2022年8月18日 0時) (レス) @page18 id: 9b02bb5cbf (このIDを非表示/違反報告)
雨降り星(プロフ) - 全部千冬が引き継ぎます!! (2021年9月3日 10時) (レス) id: c629cc7e2d (このIDを非表示/違反報告)
なのは(プロフ) - あとなんか知らんけどバジリスクが4ぬとこめちゃ冷静でした丸 思い言え無くて残念だったねバジリスク…君の無念はきっと千冬が果たしてくれるよ多分! (2021年9月3日 9時) (レス) id: 4035e5a938 (このIDを非表示/違反報告)
雨降り星(プロフ) - なのはさん» なんか壮大なストーリーが始まる予感…っ!! (2021年9月3日 9時) (レス) id: c629cc7e2d (このIDを非表示/違反報告)
なのは(プロフ) - 雨降り星さん» そう…これが…黒い衝動の始まりだった…(((おやめなさい (2021年9月3日 9時) (レス) id: 4035e5a938 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雨降り星 | 作成日時:2021年8月21日 0時