悪女にすら気付かない。

Episode８ ページ9

――――いやはや、弱肉強食、ここに極まれりですな。






現在絶賛、昆虫モニタリング中です。…具体的に言うと、ハチの死骸に大量の蟻がわんさか群がって、必死に巣に持ち帰ろうとしてるのを見ている。









―――『生き物はみな、死ねば土に還っていくものなのです』



生き物系の番組で、そんなことを言っていた気がする。ハチさん、ご愁傷様です。蟻はそんな好きじゃないけど、こうやって巣まであと一歩のところまで来ると、応援したくなるから不思議だ。





何か後ろの方が騒がしかったけど、私には関係ないかなーと思って、ずーっと蟻とハチを見てた。





「＿＿＿＿！…オイ、A！」



…ん？もしかしてなんか呼ばれてる？ゆっくり後ろを振り向いたら、般若の形相をした皆様と目が合った。ドラケン君と銀髪君は困ったような顔してたけど。





「何じゃらほい」

「…っ！ふざけたこと言ってねえで、朱里に謝れって言ってんだよ」



ボケて返せば、めちゃめちゃキレていらっしゃった。
――――あかりちゃんに謝る？…あ、もしかしてあの事かな。






一つ、思い当たる節があったので、多分それだと思う。そうだね、謝ることは大事。自分の非を認めることは、人間関係において非常に重要だから。






「あ、ごめんごめん、確かにあれは私が悪かったよ。マル付けするときとか困っただろうし。次はしないように善処するから、許して」


素直にぺこりと頭を下げれば、わけわかめの雰囲気が流れ始める。




「…丸付け？」

「え？そのことじゃないの？」

「―――Aは、何に対して、謝ってるんだ？」


一応念のために、といった感じで質問するドラケン君。




「あかりちゃんの机に置いてあったボールペンを勝手に解体改造してサ○サ銃作ったことに怒ってるんじゃないの？」

「え、あれAちゃんの仕業！？」

「うん。ごめりんこ」

「謝る気ないでしょ」


ナイスツッコミですな、あかりちゃん。まあ私が悪いんですけどね。





「ってことで私は謝ったので。蟻んこモニタリング再開しまー…」

「させるかよ」


―――阻止された。

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