Episode32 ページ33
◇___side 朱里
「どうやって落とし前つけてくれんだぁ、アアン!?」
「金出せや金ぇ!!」
――――どうしてこんなことに、なってしまったんだろう。
いつも通り、塾から帰るところだった。いつもより少し時間が伸びたので、いつもと違う路地裏の道を透ったことが仇になった。
少し遠くても大通りを通って帰るべきだった。
ふらついた拍子に、ガラの悪そうな二人組にぶつかって。案の定ごめんなさいの言葉で、はいそうですかと簡単に通してくれるはずがなかった。
助けを呼んだって誰も来ないし、そもそも喉が引き攣ってうまく言葉すら出ない。
「いってえ、これ絶対骨折してるわ〜治療費ちゃんと払ってくれよなぁ?」
「そんな、少し、ぶつかっただけで……」
「はああ!?てめえがぶつかっといて口答えしてんじゃねぇぞこのアマ!」
「お金がねぇなら、お前の体で払ってもらってもいいんだぞ?」
下卑た視線が、体中を舐めまわすように走る。おぞましい感覚に背筋がぞわりとした。
視界が涙でぼやける。何で自分が、そう恨むとともに絶望が全身を襲って、
「おい、黙ってねぇでどっちにするかさっさと決め――――かっ」
「!?どうし……ごっ」
突如として何かを打ち付けるような鈍い音が響き、目の前の二人がどさりと倒れこむ。
「な、なに……」
「―――大丈夫?朱里ちゃん」
大きく竹刀を振りかぶった体勢で、惚れ惚れするほど美しい身のこなしを披露したのは、紛れもなく、佐倉Aだった。
「なんで、ここに…」
「剣道の帰り。なんかうるさいなと思ってみてみたら、厄介な奴らに絡まれてるぽかったから。―――余計なお世話だった?」
そんなことない。彼女がいてくれたから、自分はこうして無事でいる。現に今、安堵により座り込んでしまったわけで。
「立てる?」
「ありがと、」
差し出された手を有難く握ってそのまま立ち上がる。彼女の手はどこかひんやりしていて、それでいて何故か暖かかった。無性に泣きたくなったのを何とかこらえて。
最終的に家まで送ってくれたAは、「それじゃ、また明日」と振り返ることなくすたすたと歩いて行ってしまう。
その後ろ姿を、いつまでも、見えなくなるまで目で追い続けていた。
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グラニー京子 - 面白かった! (2022年4月4日 14時) (レス) @page38 id: 90faee3a30 (このIDを非表示/違反報告)
雨降り星(プロフ) - ふゆきさん» 朱里ちゃんそこまで気に入っていただけるなんて…!番外編、楽しそうなんですけどね… (2021年12月30日 23時) (レス) id: c629cc7e2d (このIDを非表示/違反報告)
雨降り星(プロフ) - わかめさん» 返信遅くなってすいません!…ええっ、ほんとですかめっちゃ嬉しいです是非是非見てみたいです!! (2021年12月30日 23時) (レス) id: c629cc7e2d (このIDを非表示/違反報告)
雨降り星(プロフ) - ももさん» ぐへへ、ほんとですか?←きも 愉快になっていただけたら嬉しいです! (2021年12月30日 23時) (レス) @page37 id: c629cc7e2d (このIDを非表示/違反報告)
ふゆき - 主人公ちゃんと朱里ちゃんの絡みが凄い好きです!番外編とかでみんなの日常編みたいなの作って欲しい… (2021年12月30日 9時) (レス) @page38 id: 0daf234829 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雨降り星 | 作成日時:2021年9月13日 23時