Episode12 ページ13
「場地さん、今日もいい天気っスね!」
「おう」
土曜日の朝。場地が散歩に出かけようとしたところ、千冬がそれに気付き、「俺も付いていっていいスか?」と期待のこもった眼差しで問い、場地が了承したことによって今に至る。
千冬の言う通り、今日はいい天気だ。ポカポカとした陽気が心地いい、散歩日和の日。
足取りも自然と軽くなるが、突如として千冬の顔が険しくなり、歩みが止まる。
「場地さん、あれ…Aさんじゃないですか?」
「ん?」
彼が指さす方向に視線を向ければ、確かにそこには、艶やかな黒髪がトレードマークのAがいた。
場地の顔も自然と険しくなる。何せ、朱里をいじめたという張本人だ。朱里の友達として、彼女のことは許せない。
「千冬ぅ、アイツがこっちに気付いても、思いっ切り無視すんぞ?」
「ウッス」
そう、二人して息巻くのはいいものの、Aはなかなかこちらに気付かない。
逆にこちらの方がもどかしくて、いったいアイツは何をやっているんだとコッソリ覗き込む。
「…あ、ネコ」
「可愛いっすね」
―――Aは猫と戯れていた。野良猫とは思えないくらいに美しく、高級そうな猫だ。
真っ白いモフモフの体毛は汚れ一つなく、瞳はまるで宝石のような翡翠色。数々の動物と触れ合ってきた場地でさえ、思わず唸りたくなるほどの美猫である。
首には高そうな首輪までついていて…………………首輪?
「君はホント可愛いねぇ、ピロスカちゃん。お散歩、楽しいねぇ」
「にゃあ」
Aの呼びかけに答えるように鳴き声をあげる猫。
「………マジかよ、アイツ、ネコの散歩してんの?」
「………猫って、散歩させる動物でしたっけ?勝手にどっか行って、勝手に帰ってくるもんじゃないですか?」
ピロスカという名前が付いている限り、彼女の飼い猫であるようだ。まだ子猫なのだろうか、かなり小さめである。色々とぶっ飛んでるAであることを再認識する二人。
「―――んふふ、可愛い」
「「……っ!?」」
どんな時でも無表情で、感情の起伏の乏しいAが微笑んでいる。
目尻をとろんと緩ませ、ふやけたように甘い表情を作るAに、思わず言葉を失った。
1069人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「東京リベンジャーズ」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
グラニー京子 - 面白かった! (2022年4月4日 14時) (レス) @page38 id: 90faee3a30 (このIDを非表示/違反報告)
雨降り星(プロフ) - ふゆきさん» 朱里ちゃんそこまで気に入っていただけるなんて…!番外編、楽しそうなんですけどね… (2021年12月30日 23時) (レス) id: c629cc7e2d (このIDを非表示/違反報告)
雨降り星(プロフ) - わかめさん» 返信遅くなってすいません!…ええっ、ほんとですかめっちゃ嬉しいです是非是非見てみたいです!! (2021年12月30日 23時) (レス) id: c629cc7e2d (このIDを非表示/違反報告)
雨降り星(プロフ) - ももさん» ぐへへ、ほんとですか?←きも 愉快になっていただけたら嬉しいです! (2021年12月30日 23時) (レス) @page37 id: c629cc7e2d (このIDを非表示/違反報告)
ふゆき - 主人公ちゃんと朱里ちゃんの絡みが凄い好きです!番外編とかでみんなの日常編みたいなの作って欲しい… (2021年12月30日 9時) (レス) @page38 id: 0daf234829 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:雨降り星 | 作成日時:2021年9月13日 23時