１６８．side A ページ19
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あれはリーダーがさくら荘に越して来て、十日くらい経った頃だった。
いつものように出勤した俺は、二日前から熱を出していたリーダーの様子を伝えるために松兄の席に向かった。
「松兄、おはよ」
「おう、おはよう。
アイツの具合はどうだ」
松兄は、社内ではリーダーのことを絶対に「大野」と呼ばない。
俺もそのことはキツく言われてたから、いつも主語抜きで答えていた。
「今朝はようやく三十七度台に下がったよ。
…ところで松兄、何やってんの…？」
松兄は机の横に段ボール箱を置いて、机の中の私物をポンポン放り込んでいた。
よく見る異動の光景だ。
「見てのとおりだよ」
ケロッとした顔でそう言うから、俺はてっきり松兄が社会部に復帰するんじゃないかって思っちゃって。
「もしかして異動…！？
松兄、やったじゃん！」
嬉しくなって背中にしがみつくと、真向かいの席に座ってる女性記者がギョッとした顔で俺を見て、真顔で首を横に振った。
えっ？
異動でしょ？
社会部に戻るんじゃないの？
まさか、ただの席替え？
きょとんとしてると、ガムテープで段ボール箱の封をした松兄が立ち上がり、俺を見下ろして言ったんだ。
「辞表を出した」
「えっ！？」
「おまえにもいろいろと世話になったな。
これからも頑張れよ」
ニカッと笑った松兄は、唖然としている俺の背中を景気よく叩いて、足元の段ボール箱を「よっこらしょ」と持ち上げた。
箱を抱えたまま部署のみんなに向き直り、「それじゃあ皆さん、お元気で」と言い置いて立ち去ろうとするから、俺は慌てて大きな背中を引き止めた。
「ちょっと待ってよ！
松兄、辞表って何！？
いったいどういうこと！？」
「シーッ。
朝っぱらから大声出すなよ。
言ったまんまだよ。
今日でここを辞めることにした」
「冗談でしょ！？
なんだって急に！」
「大声出すなって」
松兄は困った顔で壁の時計を見上げ、始業時刻までまだ余裕があることを確認すると、小さく顎をしゃくった。
「しかたねぇな…ちょっと来い」
どうやらおおっぴらに話せないような内容らしい。
擦れ違う社員に怪訝な顔をされながらも、平気な顔で「どーもどーも」と一方的に挨拶をして、ずんずん歩いて行く松兄。
昨日までは、いたって普通。
辞めるなんてひと言も言ってなかった。
いったい何があったんだろう。
俺は混乱した頭のまま、松兄の後を付いて行った。
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kotorix(プロフ) - 羽琉さん» 羽琉さん、コメント有り難うございます！長らくお待たせして本当に申し訳ございませんでした。更新分の下書きを終えました。もう少しだけお待ち下さいね！ (2015年11月22日 16時) (
レス) id: 66db8230c5 (このIDを非表示/違反報告)
羽琉(プロフ) - 「君と歩く坂道6 」楽しみにしています。 (2015年11月22日 15時) (レス) id: af49d66303 (このIDを非表示/違反報告)
kotorix(プロフ) - あやちさん» あやちさん、コメント有り難うございます！書きたかったスカイツリーネタをここに放り込み、ついでに山々しくさせていただきました(笑)次パートは物語がやっと動きます。ノープランで書き出したこの長い物語も、いよいよ終盤です。これからも宜しくお願いいたします！ (2014年11月24日 11時) (レス) id: 66db8230c5 (このIDを非表示/違反報告)
kotorix(プロフ) - 美唯さん» 美唯さん、いつもコメント有り難うございます！やっと移行しましたので、突っ込みどころ満載な続きを是非ご覧下さいませ♪昨晩はほぼほぼ徹夜でしたが、自分なりにひと山越えて何だかスッキリです。応援いただき本当に感謝です！ (2014年11月24日 10時) (レス) id: 66db8230c5 (このIDを非表示/違反報告)
kotorix(プロフ) - えりんこさん» えりんこさん、いつも有り難う！たった今、やーっと移行したよー！（←激亀）こんな展開でいいのか分からないけど、次パートでは私の限界を絞り出しました。これがノープラン＆見切り発車の怖さってヤツだと実感してるとこ。疲れた… (2014年11月24日 10時) (レス) id: 66db8230c5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：kotorix
| 作成日時：2014年9月7日 11時
