１０４．side S ページ5
・
午前一時半 ――――
居間の扉を開けると、リビングボードの小さな灯りが俺を待っていた。
水を飲もうと台所へ行くと、年下組が使ったのだろう、洗ったグラスが三つ伏せられていた。
まだ水滴が乾いていない。
どうやら遅くまで飲んでいたらしい。
この時間まで外で時間をつぶして来たのは正解だったな。
静かに階段を上がり、二号室の扉を開ける。
耳を澄ませると、規則正しい寝息。
ベッドの中で、あどけない顔の領が眠っていた。
そっと頭を撫でると、コロンと寝返りを打って、俺に背を向けた。
小さな背中に愛しさが募る。
守ってやりたい。
守ってやらねばと、強く思う。
ダウンケットを掛け直し、静まり返った廊下に出る。
心優しい住人たちは今頃は夢の中。
明日の朝、彼らはきっと今晩は楽しかったかと訊くだろう。
俺は何事もなかったように振る舞えるのだろうか。
面倒臭いが、煙草のにおいと汗は洗い流したい。
着替えを持って階段を下りている時、玄関のドアベルが小さく鳴った。
どうやら智くんが帰って来たようだ。
居間を素通りして玄関に行くと、誰もいなかった。
灯りの点いた玄関の三和土に、智くんの革靴が脱いだままになっている。
いつもならきちんと下足棚に仕舞うはずなのに。
嫌な予感がして廊下を引き返し、居間とは反対側にある洗面所へ向かう。
薄く開いたトイレのドアの隙間から漏れた灯りが、暗い廊下にオレンジ色の筋を作っていた。
「智くん？」
扉をノックして声を掛けたが返事がない。
「智くん、開けるよ？」
そう言うと同時に扉を開けると、予感的中、智くんが便器の前で蹲っていた。
彼はぐったりと壁に寄りかかりながら、血の気のない顔を上げて「開けるの早いよ」と文句を言った。
「…いいって言ってから開けてよ…」
「ごめんごめん。
倒れてるんじゃないかと思って」
智くんを宥めながら、便器の中を確認。
多少吐いたようだが、血液が混じってないようでホッとする。
固形物は何もなし…
胃が空っぽで、吐くものがなかったんだろう。
「立ち上がれる？」
「……ん…」
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 616人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
kotorix(プロフ) - satoshiikoさん» satoshiikoさん、その通りです！今、誤字脱字その他の最終チェックをしておりますので、もうちょっとだけお待ち下さいね〜♪ (2014年9月7日 13時) (
レス) id: 66db8230c5 (このIDを非表示/違反報告)
satoshiiko(プロフ) - 次パートはパスが取れるのを待っていればいいのかな？ (2014年9月7日 13時) (レス) id: 48c930074b (このIDを非表示/違反報告)
kotorix(プロフ) - satoshiikoさん» satoshiikoさん、はやい！ついに追いつかれてしまいました〜！本当に有り難うございます。通しで読んでいただくと、思いつきで書いてるのがバレバレですね(^_^;)このあと次パートに更新する予定ですので、引き続き宜しくお願いいたします♪ (2014年9月7日 12時) (レス) id: 66db8230c5 (このIDを非表示/違反報告)
kotorix(プロフ) - 美夏(´･∀･`)さん» 美夏(´･∀･`)さん、はじめまして♪コメント有り難うございます。おお、リアル桜荘ですか(^_^)昭和な感じがしますね〜♪「桜の木〜」のシリーズは随分長い物語になりましたが、今回は一応完結編のつもりで書いています。最後までお付き合い下さると嬉しいです♪ (2014年9月7日 12時) (レス) id: 66db8230c5 (このIDを非表示/違反報告)
satoshiiko(プロフ) - 翔ちゃんのお口いっぱい頬張る描写とか、おかしくって楽しくて、149まで読み終わりました。また次を楽しみにしています。 (2014年9月6日 9時) (レス) id: 48c930074b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：kotorix
| 作成日時：2014年7月19日 16時
