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大野の息子の領には一度だけ会ったことがある。
大野の奥さんもまた同期の検事だったから、二人が籍を入れた後、同期仲間で集まって祝福したっけ…。
やがて授かった領に初めて会ったのは、「あの事件」の半年ほど前。
任地の鹿児島から久しぶりに大阪の実家に帰省したとき、大野たち三人が住む京都の官舎を訪ねていった。
可愛い盛りの領。
最初は俺に人見知りして、大野や彼女の陰に隠れながらこっちを見てた。
俺はそんな領と何とか仲良くなりたくて、変顔してみせたり、レゴで遊んだり…
そしたら、帰り際には、「もっとあそぶ」って言って泣いてくれた。
羨ましくなるほど幸せな家族を見たのは、それが最初で最後。
次に大野に会ったのは、その半年後、ヤツが刺されて生死の境を彷徨っていたとき。
領は亡くなった奥さんの実家に引き取られた後だった。
大野は自分の妻の葬式にも出られなかった。
目が覚めた時には、領もいなくなっていて…
「お待たせ。
岡田、悪かったな」
ノックと同時に入って来た大野。
俺の向かい側に座り、早速本田さんが揃えた資料をチェックしてる。
「領くん、怪我したんだって？」
何事もなかったような顔をしているのでそう聞くと、大野は「知ってるの？」と苦笑した。
「休み時間に雲梯から落っこちたらしい。
背中を強く打ったけれど、翔くんに診て貰ったら、ただの打撲だって」
「大事に至らなくてよかったな。
とにかくすぐ帰ってやれよ」
「いや。
たいした怪我じゃないそうだし、翔くんや看護師さんが診療の合間に見てくれてるから」
大野はそう言うと、静かに資料に視線を落とした。
いつもより青白い顔には、心配だってちゃんと書いてる。
自分に素直じゃないな、まったく。
それにしても…
櫻井が見てると言っても、診療業務をこなしながらとなると、付きっきりというわけにはいかないだろう。
その間はあのだだっ広い下宿に一人ということになる。
小学校二年生になったと聞いたが、この悪天候では昭和建築の家の中はきっと暗く、心細い思いをしているはずだ。
俺は立ち上がると向かいの大野の側に回り、ヤツが手にしている書類をサッと取り上げた。
「いいから、すぐ帰れ」
大野が俺を見上げ、書類を返せと手を差し出す。
「大丈夫だって言ってるだろ？」
ワーカホリックのおまえはそう言うだろうと思ってた。
だけど。
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kotorix(プロフ) - まめまめさん» まめまめさん、はじめまして♪とても嬉しいコメントを有り難うございます。ベタな話しか書けないのですが、切なさの中にもほっこりした気持ちになって頂けるような物語を書きたいと思っています。亀更新ですが完結まで絶対頑張りますので、今後とも宜しくお願いします！ (2015年6月13日 15時) (
レス) id: 66db8230c5 (このIDを非表示/違反報告)
まめまめ - はじめまして。いつも楽しく拝見させてもらっています。 kotorixさんの作品を読むと、心が温かくなります。これからも素敵な作品を作り続けてくださいね。 (2015年6月13日 14時) (レス) id: c466c4c127 (このIDを非表示/違反報告)
kotorix(プロフ) - しるひさん» しるひさん、ごめんなさい！思ったより時間がかかってしまいました。もう少しだけお待ちください。m(_ _)m (2014年6月22日 3時) (レス) id: 66db8230c5 (このIDを非表示/違反報告)
kotorix(プロフ) - しるひさん» しるひさん♪はじめまして！コメント有り難うございます。下書きがようやく貯まりましたので、今晩中にパート更新致します。もう少しお待ち下さいね♪この続編で領が成長していく様子を見守って下さると嬉しいです♪今後とも宜しくお願いいたします！ (2014年6月21日 19時) (レス) id: e9eb502708 (このIDを非表示/違反報告)
しるひ - はじめまして。いつも続きが気になり待ちどうしく思っています。領君が健気で可愛くって私のツボです。これからも楽しみにしています。 (2014年6月21日 18時) (レス) id: 2e9e38b6df (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：kotorix
| 作成日時：2014年5月25日 1時
