１９７．布石 ページ7
大野さんはリビングボードの上に置いてあった封筒から、日本データベース学会の案内チラシを出して、櫻井さんに見せた。
櫻井さんは大野さんが指差す先を見て、「ああ、この分科会ね」と言って頷くと、顔を上げた。
「九月の京都か。
まだ残暑バリバリだろうけど、鴨川の川床で一杯やるのもいいなぁ。
俺、付いていこうかな」
「確か建築学会の日程と重なってたよ。
筑波で九月十七日からだったよね」
「えっ、マジ！？
でも、ぶっちゃけ、筑波のはパスしてもいいんだけど」
「駄目だよ。
弟の晴れ舞台でしょ？
ちゃんと見てこなきゃ」
「資料の配布係だよ？
発表するならまだしも」
「自分も実験に参加した研究だから、翔くんたちに聴いてほしいんだよ」
櫻井さんの弟さんは父や兄姉と同じ建築家志望の大学生だったはず。
どうやら担当教授の学会発表の手伝いをするらしい。
俺も学会前にはよく教授の手伝いをしたっけ…
「けど、智くん一人で京都って、何だか心配だな」
櫻井さんが眉間に皺を寄せた。
「誰か付いていけたらいいんだけど、
カズもとっくに東京に帰っちゃってるもんね…」
九月中旬どころか、俺の契約期間はあと一週間しかない。
東京に帰ったら、ここでのバイト代を学資に専門学校に通いながら、就職活動に精を出すことになる。
「翔くんは、俺をいくつだと思ってるのさ。
せいぜい一泊だよ？
『足』の調子もいいし、そんなに心配しないでよ」
ワインのせいか、ほんのり頬を赤らめた大野さんは、ふわっと微笑み、櫻井さんのグラスにワインを注ぎ足した。
櫻井さんは、そんな彼をじっと見つめると、優しい顔で苦笑いした。
「そうだね。
まだ暑いだろうけど、久しぶりの学会を楽しんで来て」
「うん。
ありがとう」
九月十七日―――
大野さんは、その日を最後にみんなの前から姿を消す。
櫻井さんは、その事実を受け止めることが出来るのだろうか。
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kotorix(プロフ) - 薫子さん» 薫子さん♪いつも有り難うございます♪本日パート更新しましたが、ここで終わり？ってなとこで終わってます（汗）しかも明日から当分無休で仕事漬けになるため、その先は暫くお時間頂くことになってしまいます。いつもお待たせしてばかりで申し訳ございませんm(_ _)m (2013年6月4日 23時) (
レス) id: 66db8230c5 (このIDを非表示/違反報告)
kotorix(プロフ) - 秋桜さん» 秋桜さん♪コメント有り難うございますm(_ _)m一日のことを書くのに何日かけてんだって感じで恐縮です（汗）何だかんだで容量いっぱい、本日、パート更新致しました。引き続き宜しくお願い致します。八ヶ岳高原の夏を想像しながらお楽しみ頂けたら幸いです♪ (2013年6月4日 23時) (レス) id: 66db8230c5 (このIDを非表示/違反報告)
kotorix(プロフ) - くっぴーさん» くっぴーさん♪レスが大変遅くなって申し訳ございませんm(_ _)m勿体つけたような展開でホント恐縮です。鴻野さんはみんなの知らない椅子職人の一面を知っている…という感じです。伏線を回収しながら進めていきたいと思いますので、パート６も宜しくお願い致します♪ (2013年6月4日 23時) (レス) id: 66db8230c5 (このIDを非表示/違反報告)
kotorix(プロフ) - 葵羽さん» 葵羽さん♪レスが超遅くなって申し訳ございませんm(_ _)m深く考えずにシリアスにしてしまって後悔していますが、続きを何とか捻り出さないと（汗汗汗）。今日パート更新したものの、その先は暫くお時間頂くことになります。当分無休で仕事なもので…（泣） (2013年6月4日 23時) (レス) id: 66db8230c5 (このIDを非表示/違反報告)
薫子(プロフ) - ああ、ついに次回…！と、まるで連ドラの予告をハラハラしながら見ている気分です。梅雨入りしたというのに一気に暑い今日この頃、どうぞkotorixさんもご自愛くださいね。 (2013年6月4日 11時) (レス) id: e052895b8e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：kotorix
| 作成日時：2012年12月10日 1時
