夏の森にて (ページ20)

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２０．何の話？ページ20

気まずさと不安でおどおどしていると、櫻井さんが笑顔で振り向いた。

「二宮くん、一旦東京に帰るでしょ？
　いつからこっちに来れるかな。
　こっちは出来るだけ早くからお願いしたいんだけど」

雇い主は大野さんのはずだが、全てを仕切っているのは櫻井さんみたい。
大野さんは、仏頂面して何も言わないし。

「えっと…
　明後日からでどうですか？
　明日の日中、用事を全部済ませて、夜、移動しますので」

櫻井さんは相葉さんと顔を見合わせて、満足そうに頷いた。

「明日中に来てくれるんだね。
　助かるよ。
　メールアドレスと電話番号を交換しておこう。
　何時に着くかはっきりしたら教えて。
　駅に迎えに行くから」
　

俺は櫻井さんと相葉さんとアドレス交換をした。

「智くんもね」

櫻井さんは大野さんのポケットから携帯を勝手に出して、彼の了解を得ないまま、慣れた手つきで俺との赤外線通信を実行。
大野さんはこの状況を諦めているのか、何も言わずに氷が融けて薄まったジンジャーエールの残りを飲み干した。

相葉さんが壁の時計を見て、櫻井さんと大野さんに言った。

「バイトの件は一件落着だね。
　じゃあ、早速だけど、依頼の話、していい？
　俺、もう少ししたら忙しくなっちゃうからさ。
　二宮くん、ちょっと仕事の話してもいいかな」

俺が「どうぞ」と言うと、相葉さんが「ごめんね」と両手を合わせて、「これ、サービスね」と言って、ポテトサラダを出してくれた。
そして、大野さんと櫻井さんのそれぞれに、薄いファイルを差し出しながら言った。

「三ヶ月前、目黒区内のマンションの浴室で、住人のＦ大学准教授が意識不明の状態で発見され、救急搬送先で二日後に亡くなった」

えっ…？

いきなり何の話？

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