３４０．おめでとう！ ページ7
大野さんはゆっくりをベッドから身体を起こし、自分の体調を確かめるように頭を軽く二、三回振って、俺にふにゃっと微笑んだ。
「おかげで復活したよ」
無理しているようでもない様子に、俺もほっとした。
大野さんは時計を見ると「もうこんな時間か」と言って、隣りで眠る領を見た。
本当に優しい父親の顔になるんだな。
俺も幼い頃は親にこういう顔で見られてたのだろうか。
少しノスタルジーな気分になる。
「領、起きようか」
大野さんにそっと揺すられた領は、父親似の長い睫毛に縁取られた瞼をぱちんと開けた。
キョロキョロしている。
ここがどこか一生懸命考えてるみたいだけど、すぐにわかったみたい。
大野さんの顔を見上げて「おはよう」と小さな声で言った。
「おはよう、領。
誕生日、おめでとう」
大野さんはそう言うと、領をベッドから起こして、座ったまま膝の上に抱き上げた。
「ぼくのたんじょうび？」
「そう。
今日は領の誕生日。
６歳になったんだよ」
寝癖のついた領の頭に頬を寄せた大野さんは、何だか感慨深げ。
亡き奥さんの実家の協力があったとはいえ、ここまでの道のりは平坦だったはずもない。
「領、誕生日おめでとう！
今日は庭でお祝いのパーティをするよ」
俺がそう言って領の頭をクシャッと撫でると、領は「ありがとう」と、はにかんだ笑顔を見せた。
大野さんが思い出したように言った。
「そういえば、この前、相葉ちゃんが例のヤツを作ってるとこだって言ってたな」
「ええ。
夕べは帰って来てから、一生懸命、小道具やコスプレの準備してましたよ。
今回は特別バージョンだとかで」
「恐ろしいな(^_^;)」
領の目が輝いた。
「それってスゴロク？
ねえ、かずくん。
まーくんのスゴロクするの？」
すぐわかっちゃうんだな。
そんなに好きか？(苦笑)
「うん、そうだよ。
松岡さんも来るらしいから、今日は七人でやるんだって。
ところで領はあのスゴロクのどこが好きなの？」
「おもしろいから！
おなかいたくなっちゃうくらい」
相葉スゴロクは、内容は酷いもんだが、確かに盛り上がる。
こんなに楽しみにされてるなら、付き合わないわけにはいかない。
昨晩ちらっと相葉さんの部屋を覗いたら、「見るなよっ！」と慌てて隠してたけど、何だかすごかったような(怖)
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作者名：kotorix
| 作成日時：2012年5月8日 15時
