３７７．Side S ページ44
智くんは山村警部補に尋ねた。
「三上さんの回復の見込みはどうなんですか？」
「まだ何とも言えないそうです。
奇跡的に身体は骨折程度ですが、頭を強く打っているそうでして…。
まずはこれから検察庁に連絡をとって、三上さんのご家族に来て頂こうと思います」
「よろしくお願いします」
二人の刑事は、何かわかったら報告すると約束して帰っていった。
智くんは、二人が帰った後もソファに深く座り、黙って考え込んでいた。
やがて、「ちょっと出掛けて来る」と言って立ち上がった。
「今から！？
どこへ行くの！？」
夕方五時を回っていた。
まだ外は激しい雨が降り続き、四月の下旬とは思えないほど気温も下がって来ている。
日中随分濡れて風邪を引きそうなくせに、何か気になることが出来たのだろう、俺が「明日じゃだめなの？」と聞いても「うん、ごめん」と言って二階に上がって行った。
「翔さん。
いったいどういうこと？」
カズが何が何だかわからないという顔で俺を見た。
俺にもわからない。
京都時代の事務官が、どうしてあの場にいて、どうして声を掛けずに、彼の傘を黙って持ち去ったのか。
その謎はさっぱりわからないが、今この時点ではっきりわかることは一つ。
それは、智くんがまた無茶をしようとしていることだ。
検事と検察事務官はバディを組んで仕事をするから、気心は知れている。
智くんは三上事務官の今回の行動に、何か思い当たるものがあったのかもしれない。
せっかく連れて来た領を置いて出掛けるというには、余程気に掛かることがあるのだろう。
「様子を見て来るよ」
俺は不安そうな顔をしているカズにそう言うと、二階の智くんの部屋に向かった。
領が眠っているので、ドアをノックしないで開けると、智くんが振り向いた。
クローゼットからスーツを出そうとしている。
地検にでも行くつもりなんだろうか。
「ノックしないでごめん。
…地検に行くの？」
「うん…。
データベースを覗いて来るだけだから、すぐ戻って来る。
申し訳ないけど、それまで領のことを頼むよ」
智くんはそう言うと、パーカーを脱いで、白いシャツの袖に左腕を通した。
「こんな悪天候の中、出掛けようとするからにはそれなりの理由があるんだよね。
言える範囲でいいから、話してくれない？
ひとりで突っ走る前に」
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 377人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：kotorix
| 作成日時：2012年5月8日 15時
