３７４．Side S ページ41
「それであの…」
何か言いにくそうにしているカズ。
「どうかした？」
「午前中、大野さんの無事を警察に連絡したじゃないですか。
そのときの係の人に、大野さんの職業を尋ねられて、検事だと答えたんですよ。
そしたら電話の向こうですごく驚いてた感じで、東京地検の刑事部の大野検事かと聞かれて…。
さっきの電話はそれと関係あるんじゃないかと思うんです」
「そう」
「ごめんなさい。
検事って言っていいのか、迷ったんだけど、俺…」
「警察の質問だもの。
ちゃんと答えて当然だよ。
まあ、とにかく会って話を聞くよ」
智くんはにっこり微笑んで、カズの肩をポンと叩くと、領に「待たせたな。何して遊ぼうか」と声を掛けた。
・
午後四時―――
予告どおり、警視庁大塚警察署の刑事がやって来た。
山村警部補と井上巡査部長と名乗った二人をリビングに通し、領の昼寝に付き合って自室に戻っている智くんを呼びに行った。
ドアをノックしても応答がないので、そっと開けてみると、案の定智くんも一緒に眠っていた。
読み聞かせしていたのだろう、ベッドの上に絵本が開いたままになっている。
ほっそりと削げたままの頬、優れない顔色……
連日の激務に加え、今日は雨の中外出して疲れていることは明らかで……。
可哀想だったが、来客があったら起こすように言われていたので、仕方なく肩に手を掛けて二三度そっと揺すると、ぼんやりと目を開けた。
「大塚警察署の刑事さんが到着したよ。
起きて来れる？」
隣りに眠る領を起こさないよう小声でそう言うと、彼は頷いてゆっくりと身体を起こした。
怠そうな様子でベッドから立ち上がった智くんは、「つられて寝ちゃった」と苦笑いして、顔を両手でゴシゴシと擦った。
体調はどうかと尋ねると、「寝たらスッキリした」と言ったが、冷えたのがマズかったのか、優れない顔色で言うその言葉にはあまり信憑性がない。
無理矢理厚着をさせた智くんと一緒に階下に下りると、ダイニングの椅子に腰掛けていた私服の刑事二人が立ち上がり、その鋭い視線を遠慮なく彼に向けた。
「お休みのところ申し訳ありません」
そう言って名刺を差し出す彼らに対し、智くんは「お待たせしました。お疲れ様です」と言い、向かいの席に座った。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 377人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：kotorix
| 作成日時：2012年5月8日 15時
