３３８．見たいもの (5/11) ページ5
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「カズ、心配なのはわかるけどもう寝なよ」
翔さんは俺の背中をポンと叩いた。
「だけど」
役に立たないかもしれないけれど、翔さんに全て任せて寝るのは気が引ける。
何か出来ないことはないかと尋ねると、翔さんは「それなら」と白い歯を見せた。
「カズには明日…いや、もう今日か。
そう、今日頑張ってほしい。
領の誕生日だから賑やかにやりたい」
確かに。
領の心の奥の不安を忘れさせてくれるような「花火」を打ち上げてやりたい。
「いつもはどうしてるの？」
そう尋ねると、翔さんは楽しそうな顔で言った。
「まあ、簡単に言うと、庭でどんちゃん騒ぎだね。
あと、恒例の『相葉スゴロク』かな(苦笑)
あれは誰トクって感じだけど、領が好きだから。
多分松岡さんも来ると思う」
「料理はどうしよう」
「松岡さんと潤に任せておけば良いよ。
毎年バーベキューだから。
準備してる間、カズは相葉くんと一緒に領と遊んでやってよ」
「うん。
それはいいんだけど…
大野さん、大丈夫かな…」
「……大丈夫でしょ。
領の誕生日、あの人が一番祝いたいと思ってるだろうしね…」
扉の隙間から僅かに見える大野さんの横顔。
端整だけど、眠っているときはあどけなくさえ見える。
小さい身体にとてつもなく重いものを背負ってるこの人に、少しでも笑顔でいてほしい。
心からの笑顔が見たいんだ。
翔さんは勿論、相葉さんや潤くんがあんなに一生懸命彼のために動くのは、そんな思いがあるからだと思う。
同情とか、そういう上から目線じゃない。
領が笑顔でいたら、大野さんも笑顔になる。
単純な原理に俺は頷く。
翔さんは、領のことは任せてと言う俺に、頼むねと笑った。
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作者名：kotorix
| 作成日時：2012年5月8日 15時
