桜の木のある家で８ (ページ20)

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３５３．雨の日の外出　(5/17) ページ20

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「あれ？
　智くん、出掛けるの？」

土曜日の朝、九時前。
大野さんがジャケットを片手に二階から下りて来たのを見て、翔さんがすかさず尋ねた。

「うん。
　領を迎えに行って来るよ」

「…向こうのご両親と話してくるんだね」

「うん。
　義父母やみのりちゃんは妻や領にとって掛け替えのない血縁だから、俺にとっても大切な人たちだよ。
　逃げないで向き合わないとね」
　

大野さんはそう言うと、ふわっと微笑んだ。
翔さんは「そうだね」と言って、いまだ片手の利かない彼がジャケットを着るのを手伝った。

「いま雨振ってるよ。
　大丈夫？」

「大丈夫に決まってるでしょ」
　

「片手だし、足元は滑るし、何だか心配だな…
　俺が送っていければいいんだけど、これから診療あるしなぁ…
　潤を起こして、送って貰おうか？」

大野さんは骨折した右手をアームホルダーで吊っている。
左手に傘を持てば両手が塞がって危険だと、翔さんは思っているようだ。

「大丈夫だってば(笑)
　昼までには帰るから」

大野さんは心配気な顔の翔さんを尻目に、俺に「いってきます」と綺麗な笑顔を向けた。

傘はあれがいいとか財布は持ったかとか、あれこれと細かく世話を焼きながら玄関まで見送る翔さん。
寝不足を物ともせず、嫁モード全開。

夕べ、大野さんに正面から意見した翔さんが早くも懐かしい(苦笑)

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