桜の木のある家で５ (ページ11)

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１９８．Side S ページ11

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俺は病院を出ると、まずは家でイライラしてるであろうカズに電話をした。

命に別状はないというと、ものすごくほっとしたようだったが、無理を押して仕事に向かった智くんの様子を話すと、「それって安心してていいの？」と戸惑った声で聞かれた。

「まあ、大丈夫だよ。
　今晩一緒に東京に帰ることにした」

『えっ！？
　今晩！？』

「おそらく遅い時間になると思うけどね。
　熱があるし、放っておくとまたどこかへ行っちゃいそうだから家に連れて帰ろうかと思ってる」

『うん、騙してでも連れ帰って！
　大野さんがこっちに戻って来るってことは、Ｎ組の例の幹部が逮捕されるってことでしょ？
　大野さんが俺らを避ける理由がなくなるってことだよね？』

「そこらへんは俺はよくわからないけど、とにかく頑張ってみるよ」

『頼むね！
　相葉さんと潤くんに連絡しておくから』

カズの声が弾んでいた。
智くんが「さくら荘」に戻って来るものと期待しているが、俺は正直言って彼を連れ帰る自信がない。
何だかんだ最終的には頭が上がらないというか…
でも今回は「櫻井翔」ではなく智くんの主治医として頑張らなくては。

さて…
これから智くんが仕事を終える夜までの間、どうしようか。
時間はたっぷりあるが、当然のことながら観光する気分ではないし。
とりあえず出来るだけ智くんの近くにいようと思い、京都地検や府警本部のある丸太町まで行き、地下鉄の駅の真上にあるファミレスに入った。

腕時計を見ると、まだ十時半。
半日以上も何してればいいんだよ…
憂鬱になったが、仕方がない。
腹をくくって智くんが仕事を終えるのを待つことにした。

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