桜の木のある家で (ページ42)

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４２．親しくなるほどページ42

おばちゃんのまん丸の目が驚いたように見開かれた。

「ああ、そうでしたの。
　早合点でごめんなさいね！
　私は看護師の時田です。
　大先生の時からこちらでお世話になってまして、
　若先生のオムツも取り替えましたんですの。
　ホッホッホ♪」

若先生かぁ。
オムツを取り替えて貰った人なら、翔さん、頭が上がらないのかも。

「二宮さんが入られたなら、お部屋は満室になりましたわね。
　賑やかになってよろしいこと♪」

時田さんって、何だかすごく楽しそうに喋る人。
語尾に全部「♪」が付いて聞こえる(笑)

俺は「さくら荘」の賄いをすることになったと言うと、自分は料理が得意なので手伝いが必要なときは声を掛けてと言ってくれた。
マジに助かる。
潤くんに次ぐ助っ人の登場で、ますます心強い。

九時前になると、患者さんが次々とやってきた。
赤ちゃんもいれば、お年寄りもいる。
まさに老若男女。
月曜の朝だから余計に混んでるのだろうが、櫻井医院はなかなか流行っているみたいだ。

そういえば、翔さんの親御さんはどうしたんだろう。
俺と二つ違いだから、親の年も近いはず。
六十前後だと思うから、超高齢化社会のいま、まだまだ健在でいると考えるのが普通。

でも、翔さんがあの若さで医院を継いだってことは、お父さんである「大先生」が引退してるってことだよな。
普通なら、実家が開業医であっても、若い間は大学病院や総合病院で修行することが多いと聞いたことがある。
それがこの若さで早々と町医者になることを決めた経緯には、それなりの理由があるはずだ。

考えてみれば、青山に店を構える程成功している潤くんが、いまだに下宿生活してるというのも不思議だし、相葉さんが大野さんをなぜリーダーと読んでいるのかもわからない。

親しくなればなるほど、「さくら荘」の人たちのことが知りたくなる。
でも、詮索することで、折角好意的に迎えてくれている彼らとの関係が崩れることが怖い。
自然にわかるまで、彼らが話してくれるまで、焦らないように気を付けようと思った。

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