３１．食卓にて ページ31
「「「「「いただきま〜す」」」」」
潤くんの作った朝食は、豪華で絶品だった。
翔さん、大野さんは、「うん、うまい」と満足げに食べているし、あんなに泣いていた領もすっかりホットケーキに夢中だ。
「領、美味い？」
潤くんが領に尋ねると、小さな口にいっぱい頬張りながら「うん！」と答えてる。
すっかり機嫌が直ったようだ。
「かずくんがね、あとでむしのおりがみ、おしえてくれるって」
領が俺との約束を、大野さんに教えている。
大野さんは領に「よかったね」と言った後、俺を見て「ありがとうね」と微笑んだ。
「領は絵が上手いんですね。
アゲハの幼虫の絵、びっくりしましたよ」
俺がそう言うと、翔さんがドヤ顔になって言った。
「領の絵の才能は智くん譲りだから」
「そうなんですか？」
「あそこに掛かってるのが智くんの作品」
翔さんが指差した先。
ピアノの上の壁に、サラブレッドを描いた水彩画が掛かっていた。
マジですか…！？
「えっ！？
あれが！？
すっごく上手いんですけど…！」
「そう！
馬の絵だけにウマいでしょ(笑)」
駄洒落なんか言ったつもりもないのに、翔さんが豪快に笑った。
親父ギャグかよ(汗)
それにしても、マジに上手いんですけど。
毛並みの輝く様子とか、筋肉の動きとか、すごくリアルで、まるで生きているみたいだ。
「凄いですね！」と素直に言うと、大野さんは照れくさそうに微笑んで、最近は忙し過ぎて全然描けていないと言った。
「今日は何か予定があるんですか？」
「今日はね、俺たちみんな、潤に髪を切ってもらうんだ。
一ヶ月に一回の定例行事だよ」
「えっ！？」
驚く俺に、潤くんがニヤッと笑って言った。
「カズのも切ってやるよ。
『カリスマヘアスタイリスト』の俺様が」
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作者名：kotorix
| 作成日時：2012年1月29日 11時
