２１．小さな背中に ページ21
相葉さんが苦笑した。
「勘違いするなよ。
翔ちゃんは、リーダーが心配なんだよ。
あの人、ちょっと身体に問題抱えてるから」
「そうなんですか？」
「はい、そうなんです。
って、もう敬語やめようよ。
俺らって同年代なんだしさ、堅苦しいじゃん」
「そっか…わかりました。
いや、わかった」
潤くんが言った。
「まあ、カズが誤解するのも無理ないよな。
実際すごく大事にしてるからね」
そうなんだよ。
まあ、大野さんの独特な雰囲気がそうさせちゃってるのかもしれないけど、どうもそれだけじゃない気がする。
「大野さんって、足が悪いの？
何だか階段を降りるのが不自由そうだよね」
そう聞くと、相葉さんと潤くんが顔を見合わせた。
軽々しく口に出せないような何かがあるのだろうか。
「後遺症でね。
普通に歩くのは問題ないけど、階段とか段差とか、
走ったりとかはまだちょっと危なっかしいかな。
これについては、カズも気を付けてやってほしいんだけど」
潤くんが言葉を選びながら言った。
みんながこんなに気を遣ってるってことは、大野さんが抱えてるものって思ってるより深刻な事情なのかもしれない。
無理に聞き出すより、いつか話してくれる日を待つ方がいい。
「わかった」
俺はそう言って、それ以上の疑問を引っ込めた。
潤くんは、そんな俺をじっと見て、なにか考えてるようだ。
やがて静かに言った。
「…カズにも知っておいてほしいから言うね。
領はね、母親がいない子だから」
えっ…？
どきっとした。
「……お母さんと一緒に住んでるんじゃないの…？」
「母親の実家に住んでるけど、母親は亡くなってる。
だからお母さんの話はしないでやって。
領が困るから」
「………」
なんだか大野さん父子はいろいろと大変みたいだ。
バツイチだなんて思い込んでたけど、まさかの死別かよ…。
大野さんの後遺症も関係あるのだろうか。
たった五歳の領が、その小さな背中に大きな悲しみを背負っているとは。
胸が痛んだ。
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作者名：kotorix
| 作成日時：2012年1月29日 11時
