移りゆく季節とともに番外編２／完結 (ページ34)

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８４．ページ34

やがて病院の灯りが見えて来た。

智くんがまた行ってしまう…
理屈ではない、言い様のない寂しさと不安が俺を無口にしていた。

彼が振り向く。

「ねえ、翔くん」

「え…？」

「おいらがやりたいことを最後まで出来たのって…
　みんなから、すっげぇ沢山の愛情を貰ってたからだよ」

クサいこと言うけどさ、と彼は前置きして続けた。

「…愛情ってさ…目に見えはしないけど、すごいパワーをくれる。
　自分が忘れないかぎり、減りもしない、無限のエネルギー源だよ。
　すごくね？」

智くんがふわっと微笑んだ。

「翔くんも、沢山の人に支えられて、沢山の愛情をいっぱい貰ってる。
　どんなに落ち込んでも、それを思い出したら、きっと元気になれる。
　翔くんは大丈夫。
　あとは帰るべき場所に帰るだけだよ」

「帰るべき場所…？」

「メンバーの所だよ。
　みんな、翔くんを待ってる」

彼は優しい顔で笑った。

その笑顔が合図だったかのように、彼と空間との境界がぼわっと滲み始めた。
引き止める間もなかった。
彼の身体が見る間に白銀に輝く粒子に変わっていく。

消えてしまうその前に、俺は急いで尋ねた。

「…智くんは…？
　智くんは一人で大丈夫なの…！？」

彼は笑って頷いた。
その笑顔に思わず手を伸ばしたけれど、粒子は煌めきながら掌から逃げるように消えていった。

俺も大丈夫だよ

最後にそう聞こえたような気がした。

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