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Side 風磨
Aさんからのおはよ。で、完全に目覚めはしたものの、あまりの衝撃に頭も体も緊急停止してしまった。
辛うじて残った意識は、Aさんを抱きしめている感覚のみに働いている。
誰もが一度は妄想するであろう、好きな人を抱きしめて寝ちゃうヤツ。
それを無意識を味方につけて、大胆にも実現させた俺は喜びとやっちまった感を同時に覚え、Aさんと目を合わせながら途方にくれるという事態に陥っていた。
体動が停止しているため、その間も抱きしめている妙な間。側から見れば、見つめ合い、いい雰囲気に見えなくもないだろう。
その実は、最初の一言が肝心だと停止している頭をどうにか運転させようと必死な俺がただただ黙り込んでいるだけ。
結果、出た最初の一言は、
「おはよ。」
おうむ返し。捻りなし。
「まだ眠いんだ？
寝ててもいいけど、朝起きれなくなるよ？」
幸か不幸か、おうむ返しは寝ぼけていると捉えられたようだ。
「とりあえず、起きてもいいかな？」
おっと、そうだった。
俺に抱きしめられて起きられないんだった。
あれだけ焦ったくせに、いざ離れようとすると名残惜しい。
俺、昨日何考えてたっけ。
Aさん運んで、顔見ながら・・・・
そうだ、もう此処には来る理由がなくなったから
どうしよって思って布団に顔埋めてたんだ。
起きて伸びをしているAさんに思わず声をかけていた。
「受験終わったからさぁ、そのぉ、
もう此処には来ちゃダメ？」
なんとも女々しいセリフ。
声の力も弱々しい。
ん？って振り返ったAさんに見下ろされる。
「何言ってんの？いつでも来ていいよ。勉強って終わりがないじゃん。私はこの先も風磨の先生やってあげるからさ？」
ニコって笑って、俺の頭を撫でるとAさんは部屋を出てった。
俺は、この先も生徒のままですか？
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作者名：林檎 | 作成日時：2018年8月4日 17時
