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67話 ページ20

メアリーは慌てて揺り籠に走る。途中にアズナのナイフを落として。
Aに触れようと伸ばした手を揺り籠で寝ていたもう一人が掴んだ。

「クッ…。離しなさい!哀れな堕天使‼」

「Aに触れないでよ。俺たち以上に汚れたその手で。」

シキのここまで怒りをあらわにした表情を今まで見たことがなかった。

Aが立ち上がる。揺り籠が大きく揺れた。
Maryが持っていた大きな鎌を振り上げると、メアリー目掛けて振り下ろした。

「初めましてさようなら、お母さん。」

リツカは思わず目を逸らした。
綺麗に二つに分かれた胴体から血が吹き出し、海を赤く染めていく。
その場に膝をつき、両手で顔を覆ったAが泣いていることを理解するのは容易かった。
そんなAをシキは黙って抱きしめている。

リツカはそれ以上近づかなかった。
今は二人だけにしてあげるのが一番かもしれないと思ったからだ。

「バカな子たち。」

二つに斬られた死体が嘲笑した。
黒い煙をあげながら、身体が元に戻っていく。

「昔より力はないけれど、身体が修正出来ないほどじゃないのよ。さあて、いつから目が覚めていたのかしら?」

メアリーの瞳が黒く輝く。先ほどまであった亀裂の進行が止まった。

「お母さんが自分の正体を語り始めてから。」

「あら、結構初めの方ね。ならばどうして寝たふりなんかしていたのかしら?あなたたちのどちらかが起きればこの世界にこんなふうに亀裂が生じるのに。」

「俺が何にも調べてないと思ってたの?」

「本当よね。あなたは一体どこでわたくしめの情報を手に入れたのか。」

リツカはアズナのナイフを拾い、揺り籠の方に近づいた。

「お母さん。私も一つだけ質問したいの。」

目を赤く腫らしたままAが問う。

「あら、こんなわたくしめをまだ母だと思っているのね。いいわよ。今日はあなたも誕生日なわけだしね、ただし、一つだけね。」

メアリーがリツカに気づいた様子はない。

「お母さんは私を愛してはいなかったの?」

ナイフを振り上げたリツカの手が止まる。
メアリーの顔からは笑みが消える。メアリーは後ろのリツカの腕を掴むと二人の方へ投げた。

「そんなの勝手に想像したら?自分を傷つけない想像を‼
奇跡が起きてまた会えたら教えてあげるわよ。何百何千何万年後にあなたが生まれ変わってわらくしめを探しだせたらね!」

メアリーは下半身を人魚に変えると海の向こうへと消え去った。

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(プロフ) - BAT ENDではなくBAD ENDだと思うのですが…… (2017年11月3日 20時) (携帯から) (レス) id: c4241e28be (このIDを非表示/違反報告)
あい - 凄く面白いです!更新楽しみにしてます。 (2016年2月7日 11時) (レス) id: c503bd2bf1 (このIDを非表示/違反報告)
雲雀聖瑠(プロフ) - 雫石さん» ありがとうございます。これからも応援よろしくお願いします (2016年1月27日 20時) (レス) id: 1f2f759d77 (このIDを非表示/違反報告)
雫石(プロフ) - 続編おめでとうございます!いつも楽しませて貰っています!(*´ω`*) (2016年1月27日 17時) (レス) id: 7d08b6c3ed (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:雲雀 聖瑠 | 作者ホームページ:.  
作成日時:2016年1月27日 17時

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