動揺しているのは ページ47
「ピンピンしてんじゃねぇか！」
ヴィクトルに顎を持たれたまま、声のする方を二人で見ると金髪の綺麗な外国人が喚いていた。そしてその横には勇利の姿。一体いつからそこに居たのだろう。
「ユーリ、来てたのか〜！」
ヴィクトルはそのまま空いている方の手をひらひらと振る。が、こちらはそれどころではない。
今、完全に流されていた。声がしなかったら確実に唇が触れていただろう。ヴィクトルに見惚れて、愛しげに目を細められ見つめられ、その表情に鼓動が早くなって、近付く唇を避けようとも思わず大人しく目を伏せた。
それだけでもどうかしていたと思うのに、その現場をまさか第三者に見られてしまうとは。しかも、幼馴染みであり初恋の相手である、勇利に。
ガッ、と顔と頭に熱が昇る。きっと今の顔は真っ赤だ。恥ずかしい、恥ずかしい。その気持ちで満たされてしまって、顎を掬ったまま二人に振り向いているヴィクトルの手首に、弱々しく手を置いた。
「あの、ヴィクトル……は、離して」
目が合わせられない。小さく懇願すると、ヴィクトルはピクリと小さく身じろいで、そして少しの間を置いた後、くいっとそのまま顎を持ち上げ、そしてこちらの鼻先にちゅっ、とリップ音を立て口付けた。
「……っ、」
勇利が見てるのに、知らない人が見てるのに、見られているのに。ヴィクトルが今までしてきたスキンシップの方が大胆な事もあったけれど、断然今の方が恥ずかしい。より一層顔に熱が篭る。
流れる動作の後、そっと顎から手を離してくれたけど、もうまともに顔が上げられない。
「A、帰らないでね」
小さく呟いたヴィクトルは勇利達の方へ滑り寄って行った。この間は慌てて逃げ帰ってしまったので、念を押したのだろう。
ヴィクトルの背中をチラリと見て、茹だってしまいそうな熱にたまらずその場でしゃがみこんだ。本当にヴィクトルと居るとおかしくなる。愛されていると錯覚してしまいそうなほど優しい仕草に、一体何人の人間が人生を狂わされたのだろう、なんて。
出会ってどのくらいだ？ まだ、二週間も経っていない。そんな相手にこんなにも振り回されてしまう。それが悔しくもあり、怖くもあり、嬉しくもあった。
「…でも、だめだ」
喜んではだめだ。振り回されてはだめだ。それで痛い目を見たんじゃないか。それで長谷津へ帰ってきたんじゃないか。頭に浮かんだ優しく名前を呼ぶかつての愛しい人であった彼の姿と、ヴィクトルの姿が、少し重なった。
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倉科(プロフ) - Kagaさん» わざわざ返信ありがとうございます…!!続編も応援しているので、頑張って下さい!※長引かせると申し訳ないので返信は不要です。 (2016年12月5日 11時) (
レス) id: 04ed6ff0e3 (このIDを非表示/違反報告)
Kaga(プロフ) - びわさん» びわさんはじめまして、コメントありがとうございます！何度も読み返して頂けているなんて光栄です(;_;)少しずつヴィクトルに変えられていく彼や周りの人間、ヴィクトル本人の動きをこれからも楽しみにして頂けると嬉しいです^^* (2016年12月5日 8時) (レス) id: c0624adda5 (このIDを非表示/違反報告)
Kaga(プロフ) - 倉科さん» 倉科さんはじめまして、コメントありがとうございます！描写は細かく頭で映像を浮かべやすいように、と心掛けていたので嬉しいです(;_;)これからもまだまだ続きますので、またお読み頂けると嬉しいです！´`* (2016年12月5日 8時) (レス) id: c0624adda5 (このIDを非表示/違反報告)
びわ - 他の小説にはない豊かな表現がとても好きで何度も読み返しています。主人公の心情が動いていくさま、過去のことなど話の構成が面白いです。これからも応援しております。 (2016年12月5日 2時) (レス) id: be5139214a (このIDを非表示/違反報告)
倉科(プロフ) - コメント失礼します。このサイトではあまり見かけないとても分かりやすく鮮やかな描写が素敵で一気に読んでしましました…ｗ凄く引き込まれてまだまだ続きが気になります。更新を日頃の楽しみにしつつ読ませていただきますのでこれからも頑張って下さい。 (2016年12月4日 23時) (レス) id: 04ed6ff0e3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Kaga | 作者ホームページ：https://twitter.com/kaga_yoi
作成日時：2016年11月6日 21時
