見守るひと ページ45
あの滑りを見て、確かにこれが頂点の人なのだと思ったけれど、これほどまでに世を騒がせるような人間だったなんて。そしてそんな事を知らずに居たなんて。確かヴィクトルははじめの時に「俺のこと知らないの？」と聞いてきた。なるほど、これほど知名度がある人間ならば当然の反応か。
多少混乱気味にそんな事を考えていると、ヴィクトルが繋いだ手にきゅ、と力を込めた。
「(大丈夫？)」
と、唇だけで問いかける。その言葉に合わせてまた、きゅ、きゅ、と何度か握られた。
「(大丈夫です)」
同じように唇だけで返し、おずおずと手を握り返す。急に人に揉まれた事を心配してくれているのだろうか。ヴィクトルの気配りは本当に細やかだ。
扉を開けてくれて、くいっと手を引かれそのまま中に通される。外の群れは中まで追い掛けては来なかった。
「いつも、こんな感じなんですか？」
中に入ってからも手を離そうとしない後ろ姿に、そわそわと落ち着かずに小さく問い掛ける。マスコミをある程度あしらう事に慣れたような姿、何処に行ってもこういう事に遭遇するということだろう。
「大抵はね。マスコミだったりファンの子だったり」
「…大変そう」
「オフの日も結構見つかるんだよなぁ、何故だろう」
それは、貴方が目立つからですよ。とは口には出さなかった。日本では特に目立つ。加えて変装の類をしないのだから余計だ。
ヴィクトルはこちらの質問にも何故か嬉しそうだ。大したことを聞いていない気がするが、何がそんなに嬉しいのだろう。手も繋いだままで、何だかそれが急に恥ずかしくなってきてしまった。
あの、そろそろ。と、声を出そうとした所で、リンクから優子ちゃんが出てきたのが見えた。
「あ」
「…おはよう」
「おはようユウコ！ 今日もよろしくね」
ばちっと目が合って、気まずいと思いながら挨拶をするとヴィクトルも爽やかに朝の挨拶をする。勿論手は繋いだままで、優子ちゃんの視線も勿論、その手に注がれる。
「おはよう」
それからとびきりの笑顔で挨拶を返してきた。まずい。絶対に何か勘違いをされている。「付き合ってないなんてやっぱり嘘じゃない」なんて思ってそうだ。
ここでパッと離すのも申し訳ないし、失礼だろう。どうしたものかと目を泳がせていると、ヴィクトルがこちらの困惑を感じ取ったのか、もう一度きゅ、と握った後にそっと指を解いてくれた。離れ間際に指の間を撫でられくすぐったいと思ったが、意外にもすんなりと離してくれた。
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倉科(プロフ) - Kagaさん» わざわざ返信ありがとうございます…!!続編も応援しているので、頑張って下さい!※長引かせると申し訳ないので返信は不要です。 (2016年12月5日 11時) (
レス) id: 04ed6ff0e3 (このIDを非表示/違反報告)
Kaga(プロフ) - びわさん» びわさんはじめまして、コメントありがとうございます！何度も読み返して頂けているなんて光栄です(;_;)少しずつヴィクトルに変えられていく彼や周りの人間、ヴィクトル本人の動きをこれからも楽しみにして頂けると嬉しいです^^* (2016年12月5日 8時) (レス) id: c0624adda5 (このIDを非表示/違反報告)
Kaga(プロフ) - 倉科さん» 倉科さんはじめまして、コメントありがとうございます！描写は細かく頭で映像を浮かべやすいように、と心掛けていたので嬉しいです(;_;)これからもまだまだ続きますので、またお読み頂けると嬉しいです！´`* (2016年12月5日 8時) (レス) id: c0624adda5 (このIDを非表示/違反報告)
びわ - 他の小説にはない豊かな表現がとても好きで何度も読み返しています。主人公の心情が動いていくさま、過去のことなど話の構成が面白いです。これからも応援しております。 (2016年12月5日 2時) (レス) id: be5139214a (このIDを非表示/違反報告)
倉科(プロフ) - コメント失礼します。このサイトではあまり見かけないとても分かりやすく鮮やかな描写が素敵で一気に読んでしましました…ｗ凄く引き込まれてまだまだ続きが気になります。更新を日頃の楽しみにしつつ読ませていただきますのでこれからも頑張って下さい。 (2016年12月4日 23時) (レス) id: 04ed6ff0e3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Kaga | 作者ホームページ：https://twitter.com/kaga_yoi
作成日時：2016年11月6日 21時
