陽と陰 ページ43
「やっぱり重かった？ すみません…」
「いや、Aはもう少し太っても全然大丈夫だと思うよ、軽すぎる」
「でも、そんなに疲れてますし……」
アイスキャッスルはせつに着いて、ヴィクトルがぜぇはぁと息を荒く吐きながらしゃがみこんだ。
裏手に止めた自転車の鍵をかけながら、スポーツ選手にいらぬ負担をかけてしまったかもしれないと謝罪を口にすると、ヴィクトルは「いや、雑念が」とよくわからないことを呟いて、ゆっくりと立ち上がる。
「ざつねん……？」
「……A、体重もだけれど、身長も伸ばした方が良いかもしれないね。この角度がまたよろしくないよ」
「伸びなかったんですよ、仕方ないでしょ」
ヴィクトルの言葉を反復しながら見上げればまたよくわからないことを言う。しかも身長の事に触れられ、こちらとしては面白くはない。実は結構気にしているのだ。170cmに届かない身長で、どうやら180cm程あるヴィクトルと目を合わせるにはやはり見上げるしかない。
俺だってもっと高い身長になりたかったけど、成長が止まってしまったんだから仕方ないじゃないか。む、と口を尖らせると、目の前の男は今度は「ああだめだもう墓穴だ」と顔を覆う。
本当にヴィクトルはここ最近よくわからない。目をそらしたり、こうして一人ぶつぶつと何かを呟くことが増えた。
こちらの話も右から左で、ぼーっとしている事も増えたような気がする。もしかして、避けられているんじゃないか、なんて思ってしまう。
「(……何か、気に障ることしたかな)」
そうだとしたらはっきり言ってくれれば良いのに。あんなに激しかったスキンシップもここ最近は大分少なくなっているし、からかい飽きたのだろうか。
「A？」
「……行きましょうか」
飽きた。そう考えると胸が痛んだ。
別にはじめから、からかいだと思っていたので「やっぱりそうか」という気持ちになるだけだと思っていたのに、それだけではなくて、何だか酷く苦しくなった。
それはきっとヴィクトルの触れ方に、多少なりとも「好意」が見え隠れしていたからだと思う。それは本人も比喩していたように、子犬を可愛がる感覚のそれなのかもしれないが。
そのスキンシップが無くなったことで、「好意そのものも無くなった」かのような感覚に陥っているのだと、そんな事をぼんやりと思った。
どうしてこんなに振り回されなくてはいけないのか。少しだけ昔を思い出してしまって、胸がジクリと痛んだ。
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倉科(プロフ) - Kagaさん» わざわざ返信ありがとうございます…!!続編も応援しているので、頑張って下さい!※長引かせると申し訳ないので返信は不要です。 (2016年12月5日 11時) (
レス) id: 04ed6ff0e3 (このIDを非表示/違反報告)
Kaga(プロフ) - びわさん» びわさんはじめまして、コメントありがとうございます！何度も読み返して頂けているなんて光栄です(;_;)少しずつヴィクトルに変えられていく彼や周りの人間、ヴィクトル本人の動きをこれからも楽しみにして頂けると嬉しいです^^* (2016年12月5日 8時) (レス) id: c0624adda5 (このIDを非表示/違反報告)
Kaga(プロフ) - 倉科さん» 倉科さんはじめまして、コメントありがとうございます！描写は細かく頭で映像を浮かべやすいように、と心掛けていたので嬉しいです(;_;)これからもまだまだ続きますので、またお読み頂けると嬉しいです！´`* (2016年12月5日 8時) (レス) id: c0624adda5 (このIDを非表示/違反報告)
びわ - 他の小説にはない豊かな表現がとても好きで何度も読み返しています。主人公の心情が動いていくさま、過去のことなど話の構成が面白いです。これからも応援しております。 (2016年12月5日 2時) (レス) id: be5139214a (このIDを非表示/違反報告)
倉科(プロフ) - コメント失礼します。このサイトではあまり見かけないとても分かりやすく鮮やかな描写が素敵で一気に読んでしましました…ｗ凄く引き込まれてまだまだ続きが気になります。更新を日頃の楽しみにしつつ読ませていただきますのでこれからも頑張って下さい。 (2016年12月4日 23時) (レス) id: 04ed6ff0e3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Kaga | 作者ホームページ：https://twitter.com/kaga_yoi
作成日時：2016年11月6日 21時
