世界一モテる男(27) ページ42
振り落とされたくないので、おずおずとヴィクトルの脇腹あたりの服をきゅっと掴む。その手を、腹に抱き着くように回すよう誘導された。
「しっかり掴まってて」
トントン、と腹に回した腕を優しく叩かれる。細いのに、しっかりとした筋肉が付いている男の背中。それに凭れて、変にドキドキしてしまった。ヴィクトルの背に密着している胸のせいで、鼓動がバレてしまわないか、少しハラハラした。
おまけに何だか良い匂いがする。香水だろうか、ヴィクトルらしい爽やかさがあって、それでいて男の匂い。今までは全く気付かなかったなと、その香りを小さく吸い込んで、また鼓動が高鳴った。大人の男だと、改めて認識をした。
背中のAが、何やら可愛い。
いや、可愛いのなんて初めからわかっている事だし何をしていても可愛いのは可愛いのだけれど、そうではなくていつもよりも可愛い行動をしている。いつもというのが100可愛いだとしたら、今のAは120可愛いくらい。正直いつもの可愛いが100で済むかと言われるとそれも怪しいのだが全く話が進まなくなる気がしているのでそこは一旦置いておく。
参ったな。腹に腕を回して背中に凭れている時点でこちらとしては相当心臓にきているというのに、無意識にか軽く擦り寄り、しかもきっとこれは匂いを嗅いでいる。汗はかいていないはずだが、何か気になったのだろうか。いつもの香水を今日も少しつけていたから、それだろうか。そうだとしたら、むしろ今まで気付いていなかったのか。
更にはAの鼓動が早い。鼓動が早いことにも勿論驚きだが、それが伝わる程密着している事にも驚いた。頭を凭れる程度かと思っていたのに、ぴったりくっつく程に身を任せてきているなんて。
こんな状態でまともに走れるのだろうか。いや、Aを乗せている状態で転んだりしたら大変だ。無になれヴィクトル・ニキフォロフ。百戦錬磨の俺は一体どこに行ったんだ。これじゃまるでcherryじゃないか。
「良いかい？ 走るよ」
「ん」
平静を装って合図をすると、コクリと頷いたのが背中越しにわかった。返事の仕方も可愛い。駄目だとにかくペダルを漕ぐことに集中しよう。
しかしAは軽いな、大人一人乗せて居るとは思えない程スイスイとペダルが漕げる。これだけ軽ければ夜も色々と楽だろう。いや違う、今はそんなことを考えている場合ではない。何を考えているんだ俺は、良いからとにかくアイスキャッスルはせつを目指して足を動かすんだ。
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倉科(プロフ) - Kagaさん» わざわざ返信ありがとうございます…!!続編も応援しているので、頑張って下さい!※長引かせると申し訳ないので返信は不要です。 (2016年12月5日 11時) (
レス) id: 04ed6ff0e3 (このIDを非表示/違反報告)
Kaga(プロフ) - びわさん» びわさんはじめまして、コメントありがとうございます！何度も読み返して頂けているなんて光栄です(;_;)少しずつヴィクトルに変えられていく彼や周りの人間、ヴィクトル本人の動きをこれからも楽しみにして頂けると嬉しいです^^* (2016年12月5日 8時) (レス) id: c0624adda5 (このIDを非表示/違反報告)
Kaga(プロフ) - 倉科さん» 倉科さんはじめまして、コメントありがとうございます！描写は細かく頭で映像を浮かべやすいように、と心掛けていたので嬉しいです(;_;)これからもまだまだ続きますので、またお読み頂けると嬉しいです！´`* (2016年12月5日 8時) (レス) id: c0624adda5 (このIDを非表示/違反報告)
びわ - 他の小説にはない豊かな表現がとても好きで何度も読み返しています。主人公の心情が動いていくさま、過去のことなど話の構成が面白いです。これからも応援しております。 (2016年12月5日 2時) (レス) id: be5139214a (このIDを非表示/違反報告)
倉科(プロフ) - コメント失礼します。このサイトではあまり見かけないとても分かりやすく鮮やかな描写が素敵で一気に読んでしましました…ｗ凄く引き込まれてまだまだ続きが気になります。更新を日頃の楽しみにしつつ読ませていただきますのでこれからも頑張って下さい。 (2016年12月4日 23時) (レス) id: 04ed6ff0e3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Kaga | 作者ホームページ：https://twitter.com/kaga_yoi
作成日時：2016年11月6日 21時
