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お誘い ページ41

「ねえA、たまには俺の滑り見に来てよ」
 ヴィクトルにそう言われたのは、朝食の時。最近ちょっとよそよそしかったヴィクトルが、目を泳がせながら言った言葉。
「たまには、って、この間も見に行ったのに」
「あれは俺を見に来た訳じゃないだろう? 勇利の滑りを見に、ユウコに会いに。だから今回は、俺を見に来て」
 前回だって結局はヴィクトルの滑りを見たのだから、同じ事なのでは無いかと思ったが、本人にしてみれば違う意味があるようだ。急に見せた真剣な眼差しに、今度はこちらの目が泳ぐ。
 生憎こちらは住み込みの従業員。日中も仕事がある。しかしヴィクトルはそれを読んでいたのか、勇利ママにはもう話はつけているから、と平然と言ってのけた。
「…わかりました、俺ももう一度ヴィクトルの踊り見たかったし…行きます」
「っ、ほ、んとうかい?」
「ヴィクトル箸落としてるよ!」
 こちらの返答に目を輝かせたと思ったら、手からするりと箸が落ちた。勇利が慌てて指摘するも聞こえていない様子だ。勇利に新しい箸を渡されてへらへらとそれを受け取っている。勇利が「もーっ」と文句を言っているがそれも聞こえていなさそうだ。
 その少しだらしのないへにゃりとした笑顔が何だか可愛く見えて、それを見ているとつい釣られて笑ってしまう。そんなに喜んでくれるのなら、時間が合う時はいつでも見に行きたいなと思うくらいには、ヴィクトルの纏う浮かれた空気に飲まれていた。
「…っA、自転車ニケツして行こうね!」
「そういう日本語何処で覚えてくるんですか」

 朝食を食べ終わり、出掛ける支度をする。勇利はどうやらまだ体脂肪が落ちず、けれどあと少しで目標値に届くとの事で、午前中は走り込みやら筋トレのようだ。
「おいで」
 玄関口でヴィクトルが自転車を前に手を差し伸べてきた。
 これがバイクであったなら、とんでもない絵になっていただろう図だ。しかし今ヴィクトルの傍にあるのはただの自転車。それでもあまり可笑しくは見えないのは何故だろう。整った顔とのギャップはこんなにも激しいというのに。
 素直にその手を取り、ヴィクトルが跨ぐサドルの後ろに座る。ただの金属の網なので、お尻が痛いが仕方が無い。
「ぶっちゃけ二人乗りは駄目なんですけどね」
「Really?」
「内緒ですよ?」
 こちらを振り返るヴィクトルに、唇に人差し指を当ててしーっ、というポーズを取る。
 慌てて前に向き直ったヴィクトルは、やっぱりここ最近、少し変だ。

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設定タグ:ユーリ!!!onICE , ヴィクトル , 男主   
作品ジャンル:アニメ
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倉科(プロフ) - Kagaさん» わざわざ返信ありがとうございます…!!続編も応援しているので、頑張って下さい!※長引かせると申し訳ないので返信は不要です。 (2016年12月5日 11時) (レス) id: 04ed6ff0e3 (このIDを非表示/違反報告)
Kaga(プロフ) - びわさん» びわさんはじめまして、コメントありがとうございます!何度も読み返して頂けているなんて光栄です(;_;)少しずつヴィクトルに変えられていく彼や周りの人間、ヴィクトル本人の動きをこれからも楽しみにして頂けると嬉しいです^^* (2016年12月5日 8時) (レス) id: c0624adda5 (このIDを非表示/違反報告)
Kaga(プロフ) - 倉科さん» 倉科さんはじめまして、コメントありがとうございます!描写は細かく頭で映像を浮かべやすいように、と心掛けていたので嬉しいです(;_;)これからもまだまだ続きますので、またお読み頂けると嬉しいです!´`* (2016年12月5日 8時) (レス) id: c0624adda5 (このIDを非表示/違反報告)
びわ - 他の小説にはない豊かな表現がとても好きで何度も読み返しています。主人公の心情が動いていくさま、過去のことなど話の構成が面白いです。これからも応援しております。 (2016年12月5日 2時) (レス) id: be5139214a (このIDを非表示/違反報告)
倉科(プロフ) - コメント失礼します。このサイトではあまり見かけないとても分かりやすく鮮やかな描写が素敵で一気に読んでしましました…w凄く引き込まれてまだまだ続きが気になります。更新を日頃の楽しみにしつつ読ませていただきますのでこれからも頑張って下さい。 (2016年12月4日 23時) (レス) id: 04ed6ff0e3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Kaga | 作者ホームページ:https://twitter.com/kaga_yoi  
作成日時:2016年11月6日 21時

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