胸の内 ページ37
Aの事が好きなのだと、自覚した。
思えばはじめて会った時のAの笑顔、営業スマイルだと言っては居たけれど、本当に子犬のように可愛くて。寒さに鼻の頭を赤くしたその笑顔に堪らず抱き締めた。その時は確かにマッカチンを愛でる時と同じような気持ちだったのだと思う。
それから、触れても撫でても、思ったような反応が返って来なくて、それが少し面白くなくて。もっと焦ったり赤くなったりしてくれるものだと思っていたから、「それで？」というような目が予想外で。大概自分も負けず嫌いであるので、何とか初心な反応を引き出してやりたい、びっくりさせてやりたい、なんて思うようになった。
けど、Aは変わらず、小さく反応を返すことはあったけれど、それ以上のものは返しては来なかった。
それが微かに変わり始めたのが、熱の出たAに添い寝をしたあの日。一階で寝てしまっていたAを布団に運ぶ為に抱き上げた後。
Aの身体が熱くて、息が浅くて。完全に熱を出しているなと、もっと早く暖めてやるべきだったし、酒を飲ませるべきではなかったと、微かな罪悪感に駆られながらそっと布団に寝かせてやった時。小さく唸り声をあげたAは、先程まで抱き締めていたマッカチンを探しているのか、魘されているのか、両手をさ迷わせていた。
「…なあに」
その姿が面白くて、ゆらゆら揺れる手を握って顔を近付ける。赤くなった顔は辛そうなのに、薄く開いた目が潤んでいて、その瞳に無防備に見つめられ、ドクリと心臓が鳴った。
「ん…」
ゆっくりと瞬きをしながら手をキュッと握り返されて、そのままAはまた眠ってしまって。離れ難くて、様子も気になった俺はそのまま添い寝をする事にしたのだけれど、その時から心臓に違和感があった。
そして朝、目覚めたAの熱を測ろうと額をつける時、ぎゅっと瞑られた目と赤い頬。邪な気持ちが沸き上がり、口端に口付けた時の動揺の仕方。この時からAの反応が少し変わった。
まるで、
「俺の心とシンクロしてるみたいだね」
なんて。
Aにそういう気持ちを抱き始めていただろう時から、触れられた時の反応が変わったのだと気が付いた。
からかってじゃない、子犬を愛でるようにじゃない。Aに触れたいと思い始めた時から、Aは頬を染めるようになった。
「まさか気付かれてる…？」
触れた時の気持ちによって反応が変わるなんて、Aは余程人の感情に敏感なのだと思った。
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倉科(プロフ) - Kagaさん» わざわざ返信ありがとうございます…!!続編も応援しているので、頑張って下さい!※長引かせると申し訳ないので返信は不要です。 (2016年12月5日 11時) (
レス) id: 04ed6ff0e3 (このIDを非表示/違反報告)
Kaga(プロフ) - びわさん» びわさんはじめまして、コメントありがとうございます！何度も読み返して頂けているなんて光栄です(;_;)少しずつヴィクトルに変えられていく彼や周りの人間、ヴィクトル本人の動きをこれからも楽しみにして頂けると嬉しいです^^* (2016年12月5日 8時) (レス) id: c0624adda5 (このIDを非表示/違反報告)
Kaga(プロフ) - 倉科さん» 倉科さんはじめまして、コメントありがとうございます！描写は細かく頭で映像を浮かべやすいように、と心掛けていたので嬉しいです(;_;)これからもまだまだ続きますので、またお読み頂けると嬉しいです！´`* (2016年12月5日 8時) (レス) id: c0624adda5 (このIDを非表示/違反報告)
びわ - 他の小説にはない豊かな表現がとても好きで何度も読み返しています。主人公の心情が動いていくさま、過去のことなど話の構成が面白いです。これからも応援しております。 (2016年12月5日 2時) (レス) id: be5139214a (このIDを非表示/違反報告)
倉科(プロフ) - コメント失礼します。このサイトではあまり見かけないとても分かりやすく鮮やかな描写が素敵で一気に読んでしましました…ｗ凄く引き込まれてまだまだ続きが気になります。更新を日頃の楽しみにしつつ読ませていただきますのでこれからも頑張って下さい。 (2016年12月4日 23時) (レス) id: 04ed6ff0e3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Kaga | 作者ホームページ：https://twitter.com/kaga_yoi
作成日時：2016年11月6日 21時
