変化 ページ24
「……」
ヴィクトルは階段を降りながら、先ほどのAの反応を脳内で反復する。
昨日の時点ではスキンシップなんて慣れてますからという顔をしていて、自分の行き過ぎたじゃれ合いにも反応が薄かった。
面白くなくて色々仕掛けてしまったけれど、それでも少し反応を返す時の表情はたまらなく可愛いと思った。困り顔で、目が泳いで、牽制しようとしている様が本当に子犬のようで。
けれど先程の反応は、昨日見たどの反応とも違くて。赤くなり、恥ずかしがっていて、少し声が上擦っていた。正直、エロオヤジ、と言われたよりもその事の方が驚きで固まってしまった。
(いや、エロオヤジも相当驚きだったが)
「オヤジって、Aとそんなに歳離れて……」
そこではたと気がついた。Aが何歳なのか、何故勇利の実家に居候をしているのか、何故スキンシップに抵抗が無いのか、好きな食べ物は、色は、歌は。
流石に出会って二日目の人間だ、知らない事の方が多いのは当然のこと。でも、知らない事がたくさんあるというだけで、これから知っていけるという期待と、知らない事があるという事実に対しての面白くなさが混ざって、不思議な気持ちになった。
「はじめてだなぁ、本当に面白いね、子犬ちゃんは」
たまに見せる寂しげで痛ましい表情も気になる。その身体に触れている時に垣間見せるその顔は、微かな拒絶。男に触れられるのは慣れているが、過度な触れ合いに何か嫌な思い出でもあるのだろうか。恋情を滲ませたようなそれが、苦手なのだろうか。
朝食を取り、自室で着替えて出掛ける支度をする。勇利に聞いたところ、行きつけのリンクがあるのだという。練習するなら其処しか無いが、まずはあの体型をどうにかさせなければ。
ヴィクトルは寛子の元にAの状態をこっそりと伝えに行き、その後自転車を借りて勇利を連れ出した。
Aは勇利を大切に思っているようだし、体調が悪いなんて知られたくない対象もきっと勇利だ。連れ出してしまえばバレることも無いだろう。その代わり、夜までに良くなっていないと駄目だからね。そう心の中で呟く。
「全く、手間のかかる子犬ちゃんだ」
自転車で風を切りながら小さく笑う。後ろでひいこらしながら着いてくる勇利には聞こえていない。
なんて幸運だろう。この地で自分を揺るがす人間に出会えるなんて、それも二人も。
ヴィクトルは鼻歌でも歌い出しそうなほどに、顔を綻ばせ、口元を緩めた。
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倉科(プロフ) - Kagaさん» わざわざ返信ありがとうございます…!!続編も応援しているので、頑張って下さい!※長引かせると申し訳ないので返信は不要です。 (2016年12月5日 11時) (
レス) id: 04ed6ff0e3 (このIDを非表示/違反報告)
Kaga(プロフ) - びわさん» びわさんはじめまして、コメントありがとうございます！何度も読み返して頂けているなんて光栄です(;_;)少しずつヴィクトルに変えられていく彼や周りの人間、ヴィクトル本人の動きをこれからも楽しみにして頂けると嬉しいです^^* (2016年12月5日 8時) (レス) id: c0624adda5 (このIDを非表示/違反報告)
Kaga(プロフ) - 倉科さん» 倉科さんはじめまして、コメントありがとうございます！描写は細かく頭で映像を浮かべやすいように、と心掛けていたので嬉しいです(;_;)これからもまだまだ続きますので、またお読み頂けると嬉しいです！´`* (2016年12月5日 8時) (レス) id: c0624adda5 (このIDを非表示/違反報告)
びわ - 他の小説にはない豊かな表現がとても好きで何度も読み返しています。主人公の心情が動いていくさま、過去のことなど話の構成が面白いです。これからも応援しております。 (2016年12月5日 2時) (レス) id: be5139214a (このIDを非表示/違反報告)
倉科(プロフ) - コメント失礼します。このサイトではあまり見かけないとても分かりやすく鮮やかな描写が素敵で一気に読んでしましました…ｗ凄く引き込まれてまだまだ続きが気になります。更新を日頃の楽しみにしつつ読ませていただきますのでこれからも頑張って下さい。 (2016年12月4日 23時) (レス) id: 04ed6ff0e3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Kaga | 作者ホームページ：https://twitter.com/kaga_yoi
作成日時：2016年11月6日 21時
