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引力3 ページ16

指先が器用なのか、もう箸を使いこなすヴィクトルを見て感心する。持ち方を教える為に触った時も思ったけれど、指が長い。細くて、白くて。顔面偏差値が高い人は他の部位も美しくなるのだろうか。
「Aも飲みなよ〜」
「いや俺まだ仕事中だから」
「少しくらい良いだろ?」
「駄目です」
 ええ〜と残念そうに声を上げるヴィクトルは、氷上では繊細で儚くて、けれど色香を放ち王としての貫禄もあるような、そんな姿だそうだ。が、ここに居るヴィクトルはとても同一人物だと思えぬ程無邪気でやんちゃだ。人は見かけによらないと、本当にその通りだった。
 ただ、
「じゃあ、口移しで飲ませちゃおうかな…」
 色香を放っている、という点はオフアイスでも変わらないようだ。酒の入ったグラスを持ちながら、じっとこちらを見つめる瞳の威力は凄まじい。この男は己の色気を自覚しているのだからたちが悪い。
「良いの? キスしちゃうよ?」
「…嫌です」
「なら自分で飲んでよ、ほら」
 とん、と唇に指を押し当てられる。む、と睨み上げてもヴィクトルの余裕そうな表情は変わらない。この男の事だから、口移しなんかも冗談じゃなさそうで油断できない。
 勇利、助けてくれ。ちらりと向かいの勇利に目をやると、勇利は惚けた顔でポリポリと、ずっと漬物を齧っていた。放心状態に近い。
「……」
 まだ受け止められないのか、勇利。とりあえず受け止めなくて良いから助けてくれないだろうか。
「ほーら、子犬ちゃん、食べられたくなかったら言う事お聞き」
 すり、と唇を指がなぞる。ヴィクトルは相変わらず楽しそうな顔をしていた。
「子犬じゃありません。わかりましたよ、ちょっとだけですからね」
 この強引さ、かといって嫌味の無さ。これは持ち前のカリスマ性といったところだろうか。等と感心している場合ではない。ヴィクトルがフィギュアスケートの世界王者だと言う事に納得するような瞬間を垣間見る。
 弱くは無いのだし、今日はもう後片付けをしたらおしまいだ、ほんの少しだけ、ごめん寛子さん。注がれた酒をくっ、と煽った。



「A、A。眠いの?」
「んー…ねむい」
「仕方ないなぁ、さぁ俺の腕の中で」
「嫌だ」
「…釣れないね」
「マッカチン…暖かい」
「…ずるいぞマッカチン、ご主人様を差し置いてAに抱っこされるなんて」
「クゥン」
「…やれやれ、二人まとめて抱っこかな」

 まぁ、俺の思惑通りだよ、A。夢の中で、そんな声が薄らと聞こえた。

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設定タグ:ユーリ!!!onICE , ヴィクトル , 男主   
作品ジャンル:アニメ
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倉科(プロフ) - Kagaさん» わざわざ返信ありがとうございます…!!続編も応援しているので、頑張って下さい!※長引かせると申し訳ないので返信は不要です。 (2016年12月5日 11時) (レス) id: 04ed6ff0e3 (このIDを非表示/違反報告)
Kaga(プロフ) - びわさん» びわさんはじめまして、コメントありがとうございます!何度も読み返して頂けているなんて光栄です(;_;)少しずつヴィクトルに変えられていく彼や周りの人間、ヴィクトル本人の動きをこれからも楽しみにして頂けると嬉しいです^^* (2016年12月5日 8時) (レス) id: c0624adda5 (このIDを非表示/違反報告)
Kaga(プロフ) - 倉科さん» 倉科さんはじめまして、コメントありがとうございます!描写は細かく頭で映像を浮かべやすいように、と心掛けていたので嬉しいです(;_;)これからもまだまだ続きますので、またお読み頂けると嬉しいです!´`* (2016年12月5日 8時) (レス) id: c0624adda5 (このIDを非表示/違反報告)
びわ - 他の小説にはない豊かな表現がとても好きで何度も読み返しています。主人公の心情が動いていくさま、過去のことなど話の構成が面白いです。これからも応援しております。 (2016年12月5日 2時) (レス) id: be5139214a (このIDを非表示/違反報告)
倉科(プロフ) - コメント失礼します。このサイトではあまり見かけないとても分かりやすく鮮やかな描写が素敵で一気に読んでしましました…w凄く引き込まれてまだまだ続きが気になります。更新を日頃の楽しみにしつつ読ませていただきますのでこれからも頑張って下さい。 (2016年12月4日 23時) (レス) id: 04ed6ff0e3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Kaga | 作者ホームページ:https://twitter.com/kaga_yoi  
作成日時:2016年11月6日 21時

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