雷3 ページ13
「A、ふわふわでキュートだった君の髪、濡れると真っ直ぐで肌に張り付いて、今はセクシーだね」
「…ヴィクトルは何で俺に構うんですか」
冷えた髪をするりと撫でられ、ちゅ、っとこめかみ辺りの髪に口付けられる。キス魔なんだろうか、先程からあちこちにちゅっちゅちゅっちゅ、本人は嬉しそうだがこちらは戸惑う。
「構いたくなるからさ」
「答えになってません、それ」
「じゃあ鈍いAの為に言い方を変えよう」
腰に回されていた腕にぐっと力が入り、更に引き寄せられた。顎を掬われ、鼻先が触れ合うほどに近づいて、碧の瞳とかち合う。お互い裸で何をやっているのだろう。ぱちくりと瞬けば、そのままヴィクトルが俺の唇をなぞりながら、今までで一番低い声を出した。
「君が可愛いからだよ、A」
「…っん」
そのタイミングで、腰に回されていた手が、つー、と背中を腰から撫であげる。ぞくりと背筋を何かが駆け巡って、小さく声が漏れてしまった。慌てて口を覆いたくても、ヴィクトルが顎を更に持ち上げるので、首が沿って覆えない。
「それにこんなに子犬ちゃんなのに、とってもエロスだ」
ヴィクトルの瞳は欲に濡れているのか、からかっているのか、これが彼のスキンシップの常なのかが分らない。恥ずかしい、確かにそうだ。でも不慣れな訳ではない。東京に居た頃の生活が頭を過ぎって、思い出したくない事まで思い出してしまいそうになる。
ヴィクトルは口を噤んだ俺を見て、きょとりと瞬いた。
「A、君」
「A！ もももしかしてここに、ヴィクトル居る…！？」
スパン、と突然開けられた戸。服を着たまま息を切らしている勇利が慌てて入ってきた。やはりヴィクトルは勇利の知り合いだったのか、頼むからこのセクハラ魔人を何とかしてくれ。
湯に浸かりながら抱き合う(ように見えているだろう、実際は一方的だが)俺達を見て、勇利が顔を真っ赤にしてわなわな震える指でこちらを指した。
「えっ、えっ！？ ヴィクトル、A…えっ、あれ！？」
「勇利！」
勇利の姿を捉えたヴィクトルはようやく俺から手を離して、ザバリと立ち上がった。至近距離で立ち上がられて見たくないものが目の前に。ふい、と目をそらしてじっと勇利の顔を見る。「助けてくれ」と滲ませたものの、混乱している様子の勇利には伝わらなさそうだ。
「今日から俺はお前のコーチになる、そしてGPFで、優勝させるぞ」
嵐に雷まで加わったような、波乱の日々がやってきた。
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倉科(プロフ) - Kagaさん» わざわざ返信ありがとうございます…!!続編も応援しているので、頑張って下さい!※長引かせると申し訳ないので返信は不要です。 (2016年12月5日 11時) (
レス) id: 04ed6ff0e3 (このIDを非表示/違反報告)
Kaga(プロフ) - びわさん» びわさんはじめまして、コメントありがとうございます！何度も読み返して頂けているなんて光栄です(;_;)少しずつヴィクトルに変えられていく彼や周りの人間、ヴィクトル本人の動きをこれからも楽しみにして頂けると嬉しいです^^* (2016年12月5日 8時) (レス) id: c0624adda5 (このIDを非表示/違反報告)
Kaga(プロフ) - 倉科さん» 倉科さんはじめまして、コメントありがとうございます！描写は細かく頭で映像を浮かべやすいように、と心掛けていたので嬉しいです(;_;)これからもまだまだ続きますので、またお読み頂けると嬉しいです！´`* (2016年12月5日 8時) (レス) id: c0624adda5 (このIDを非表示/違反報告)
びわ - 他の小説にはない豊かな表現がとても好きで何度も読み返しています。主人公の心情が動いていくさま、過去のことなど話の構成が面白いです。これからも応援しております。 (2016年12月5日 2時) (レス) id: be5139214a (このIDを非表示/違反報告)
倉科(プロフ) - コメント失礼します。このサイトではあまり見かけないとても分かりやすく鮮やかな描写が素敵で一気に読んでしましました…ｗ凄く引き込まれてまだまだ続きが気になります。更新を日頃の楽しみにしつつ読ませていただきますのでこれからも頑張って下さい。 (2016年12月4日 23時) (レス) id: 04ed6ff0e3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Kaga | 作者ホームページ：https://twitter.com/kaga_yoi
作成日時：2016年11月6日 21時
