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第6話 ページ8

肺が噎せ返る。小さな咳を1つし、私は彼女を見上げた。

指名が入ったというのに、私を行かせるつもりはないらしい。

彼女は、私を見下しきった目で、言う。

「・・・アタイは、さぁ、嬉しかったんだよねぇ。アンタが客を殺してくれて」

正確には、違う。だが、口を挟むのも面倒だ。

遮られるのが嫌なのか、彼女は早口に言葉を紡ぐ。

「そりゃあ皆、思うわよねぇ。アハハッ」

男の死体が転がっててぇ?そこにアンタがいてぇ?

部屋が血だらけじゃ言い訳出来ないわよねぇ?

皆が“アンタが客を殺した”って思うのは当然じゃないッ!

例え真実は違ったとしても、何も言えないわよねぇ?

――――――ざまぁみろぉ。

彼女の甲高い声が耳を突く。不快な声に、耳を塞ぎたい衝動に襲われた。

彼女の言動の意図は、分からない。その真意も、未だ知り得ない。

確かに私の噂の件は、他の遊女達からすれば喜ばしいものだろう。

1人でも人気が落ちれば、他の遊女に注目が行く。

平たく言えば、サバイバルゲームである。

そしてそのライフが無くなった事は――殺される事と同意義だ。

だが、それがどうしたと言うのか。

「―――貴方は、何が言いたいんですか?」

彼女の笑う声を、私の声が静かに遮る。

彼女の表情が、不機嫌な色を帯び始めた。

その顔を見上げながら、私は言う。

「何か言いたい事があるならば、遠慮は無用です。どうぞ」
「別にぃ?・・・、ただの嫌がらせよ」

彼女は唇を歪ませ、私を睨んだ。

唇の口角を上げたまま、彼女はひたすらに私を見下し、見据える。

その激情が煮詰まった瞳を見返していると、いきなり胸倉を掴み上げられた。

乱暴に立たせられ、彼女の顔が目の前に来る。

ヤニの香りが鼻を掠めた。

「・・・何か?」
「アンタのその澄ました顔が、アタイは大ッ嫌いだよ」

―――だから、何だ。

―――貴方が私を嫌ったって、何も困らない。

何かが変わる訳でもない。

無意味だ。

「オラァ、雪ぃッ、さっさと行きやがれッ!客待たしてんじゃねぇよッ!!」

野太い男の声が轟く。いい加減、行かないと怪しまれるだろう。

彼女の手を払う。着物を整え、私は襖に手を掛けた。

乾いた音と共に、襖が開く。長い廊下が、目の前に続いていた。

そして、襖を閉める、直前。

「さっさと子を孕んで、死んじまいな」

憎悪のこもった彼女の声が、聞こえた。

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飴崎 - ルーンさん» ありがとうございます〜。現状維持できるように頑張ります! (2015年2月7日 18時) (レス) id: 69cad8d3b5 (このIDを非表示/違反報告)
飴崎 - 英さん» ありがとうございます!今すぐ取り掛からせていただきますね! (2015年2月7日 18時) (レス) id: 69cad8d3b5 (このIDを非表示/違反報告)
飴崎 - バトラッシュさん» 頑張らせていただきます!読んでくださって本当にありがとうございます! (2015年2月7日 18時) (レス) id: 69cad8d3b5 (このIDを非表示/違反報告)
ルーン - とても面白いです!続編楽しみに待ってます! (2015年1月22日 2時) (レス) id: 04550145ac (このIDを非表示/違反報告)
- 面白かったです!続編楽しみに待っています! (2015年1月21日 7時) (レス) id: b6fd32bf94 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:飴崎 | 作成日時:2012年8月6日 14時

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