第３７話 ページ39
投げかけた質問に、吊るされた彼女は答えない。
大きく開いた口からは、血がごぽごぽと流れ出てくる。
頬にその冷たさを感じながら、私は不意に、気づいた。
赤子の鳴き声がする。微かではあるが、甲高い、不協和音。
彼女の腹の膨らみがビクンと動いたその直後。
彼女の口から、灰色の肌をした、丸々とした赤子の腕が出てきた。
『――――まぁ、ま？』
◇
「やぁ」
「―――――――ひっ」
目の前で、色白で、三つ編みの、あの青年が私の顔を覗き込んでいた。
「おはようA。俺の顔を見て悲鳴をあげるだなんて、随分と嫌われちゃったね」
おどけたように、青年は笑った。張り付いた笑顔も、変わらない。
私は額にびっしりとかいた汗を拭う。落ち着かない心臓に手をあてなだめ、上半身だけ起き上がる。
さっきの夢はなんだ。現実味を帯びすぎていて、気味が悪い。
吉原で首を吊ったあの女の怨念だろうか。
馬鹿な考えを振り払い、青年へと視線を移す。
小柄であっても、私よりは大きい、その青年は、私を凝視していた。
「…なんでしょうか」
「いや、別に？」
そういって、不意に手が伸びてきた。
背筋が泡立つ。息を殺されたように、体がこわばる。
しかし、そんな予想とは裏腹に、彼は私につけられている首輪を掴んだ。
めじゃり。
金属を無理矢理曲げたような音がしたと思ったら、次見たときには、首輪は取れていた。
「…え？」
「君、暇でしょ？ちょっと付き合ってよ」
投げかけられた言葉の意味が分からない。私は、ここに軟禁されるのではなかったのか。
そんな都合はどこ吹く風で青年は、入ってきたであろう出入り口を通ってしまう。
手のひらを上下に振る。どうやら、付いて来いという意味らしい。
青年の恐ろしさを、私は良く知っていたので。
大人しく、付いていくことにした。
◇
宇宙海賊、春雨の本部。アジト。
そんなことを忘れてしまうぐらいに船内は清潔で、機能的だった。
しかし、天人であろう隊員の視線には、耐え難い。
「おい見ろよ」「ちっせぇな」「あれが地球の女？」「ほそっこいなぁ」
「…うまそうじゃね？」
ぞわり、ぞわりと、休まらない悪寒が背筋を襲っていく。
「ああ、うまそう」「腹減ったなぁ」「見ろよあの首」「しゃぶりてぇ」「いや生だろ」
自分に向けての言葉とは認めたくなかったし、聞きたくも無かった。
出来るだけ青年の背中に近づいて歩く。これでは、いつ食されるか分からなかった。
ラッキーアイテム
革ベルト
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飴崎 - ルーンさん» ありがとうございます〜。現状維持できるように頑張ります！ (2015年2月7日 18時) (
レス) id: 69cad8d3b5 (このIDを非表示/違反報告)
飴崎 - 英さん» ありがとうございます！今すぐ取り掛からせていただきますね！ (2015年2月7日 18時) (レス) id: 69cad8d3b5 (このIDを非表示/違反報告)
飴崎 - バトラッシュさん» 頑張らせていただきます！読んでくださって本当にありがとうございます！ (2015年2月7日 18時) (レス) id: 69cad8d3b5 (このIDを非表示/違反報告)
ルーン - とても面白いです！続編楽しみに待ってます！ (2015年1月22日 2時) (レス) id: 04550145ac (このIDを非表示/違反報告)
英 - 面白かったです！続編楽しみに待っています！ (2015年1月21日 7時) (レス) id: b6fd32bf94 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：飴崎 | 作成日時：2012年8月6日 14時
